約 717,953 件
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/79.html
286 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22 12 00 ID ljo8SDMi 私の母は、わりと名の通ったファッションデザイナーで、合同ではあるがそれなりに大 きな会場を使って定期的にショーを行っているのだが、ときどきこんなことがあるのだ。 「ええっ、そんなの困ります。替わりのヒトの手配なんて……今更頼めないでしょっ」 朝一番に電話越しに大声を張り上げる母の声。どうやらモデルのドタキャンがまたあっ たようで、困惑した様子が丸わかりである。 「……えっ、また、いつもの手でよろしく……って、そんなしょっちゅうそんなことばか りできるわけないでしょ」 そうは言っても人のいい母のことだ。結局押し切られてしまうのがいつもの事なのだ。 「……ええ、まあ、身体のことじゃ仕方ないけれど、体調管理くらいしっかりして貰わな いとこちらも困るんですからね、ええ、まあ、今回だけはなんとかしてみますけど……」 そう言って母は力なくかちゃん、と受話器を下ろして一つ小さく溜め息を吐く。 ま、それもいつものことだ。 そして、ちらりと私の方を振り向くのだ。とても済まなさそうな顔で。 「あのね、ミサちゃん。また、お願いしたいんだけど……いい?」 ほうら、来た。 「あのね。母さんの今日のショーなんだけど、いつもの事務所にモデルさん頼んどいたん だけど、二人も急に体調を崩してしまったって、どうしても来れないっていうのよ」 しどろもどろの口調で、娘の私にまで気を使う小心さが、母のいいところでもある。 「それでね、なんとか他のコの出番を増やして、穴を埋めようと思うんだけど、それでも もう一人だけ、どうしても足りないのよ。それで、ね……」 そんな困った表情の母を見るに見かねて、私は親愛をこめてほほえみを返す。 「いいわよ、ママ。私で良かったら、好きなように使ってちょうだい」 287 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22 12 50 ID ljo8SDMi 「ありがと、ミサちゃん。でも本当にごめんね」 「いいのよ、ママ。親一人子一人。私たちたった二人きりの家族じゃない。困ったときに はいつだって私が力になってあげるから、ね」 母は、頬を少しだけ上気させて目を潤ませる。 「さあ、そうと決まればさっさと着替えの用意をしないと、ね、ママ。今日の衣裳の試作 はちゃんとここにあるんでしょ」 こっくりと首を縦にする母。どんな不測の事態にも対応すべく手配しておくのが責任者 なのだということを熟知しているのだ。 「だったら、さあ衣装合わせよ。時間はないんでしょ、さあ早く」 私が急かすのもなんだけれども、そうでもしなければ事は進まないのだ。やると決めた らさっさとする。悩むのと行動するのは別にしなければならないのだ。 と、ここまでの流れでもって、私がその欠員したモデルの替わりをするのだろうと思っ た人は残念賞。 私は、決して容姿に自信がないわけではないのだけれども、品評に耐えうるほどのそれ をしているとの自惚れがあるわけではないので、そういった場に出ることは今までも、そ して今後もないと言いきってしまって構わないのよね。ま、校則でも認められてないし。 だから、私のすべきことは、私を母に『使ってもらう』ことなのだ。 リビングのカーテンを閉め切り、私と母はお互いにショーツ一枚の姿になっていた。 288 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22 14 12 ID ljo8SDMi 母も四十を過ぎたオバサンである。いくら保存状態はわりと良い方だといっても、それ なりの肉体でしかない。その内面を知っている私ならばともかくとして、これまた私以上 に観賞に耐えうるモノではないのだが……。 「それじゃ、ママ。まずはいつも通りに順番に送ってくから、しっかり受け取ってね」 「う、うん。わかった」 こっくりとうなずく母。その仕草が私には可愛くてたまらないのだ。 私は両手を母の両肩にそっと乗せて、力と意識とをそこへ注いでいく。 「じゃ、行くよっ。まずは『プロポーション』からっ」 「う、ううっ」 顔を赤く染めながら、母は小さく呻き声を上げる。 次の瞬間、母の軽く肥満した腰は大きくうねり、ぐいっと引き締まり、そしてうなだれ た胸は大きく隆起し、両方の乳房が密接し、深い谷間を形成する。 「はああっ……、あん」 大きくおばさんじみていたお尻は小さく形よく引き締まってゆき、つん、と上向きにか わいらしい「ヒップ」へと変貌していく。 「……いいっ、くっ…ひっ」 太ももや二の腕についていた無駄なお肉は削げ落ちて肌もきゅっと張りを取り戻す。か と言って骨ばってしまうのではなく、あくまでもしなやかに、女らしく、だ。 「ああっ……ふうっ、ふうっ」 荒い息を整えながら、顔を上げた母の顔はさっきまでの丸顔ではなく、輪郭もラインを 取り戻して、引き締まり「女」の顔になっていた。 「じゃあ、次は『若さ』ね。二十年分一気にいくから覚悟してね」 ふん、ふんと頭を振る母。精一杯の様子がはっきりと見て取れる。何度やっても慣れな いものかな。 まず、異変があったのは顔からだ。先ほど引き締まった輪郭がさらにシャープなものに なり、頬やあごの弛みが全部そこから除かれてしまう。目じりや口元のちりめん皺や、深 いほうれい線は解消されて、艶やかな素肌に戻っていく。垂れ気味だった目じりもくっ、 と持ち上がって猫の目のように少しつり上がった目元がクールになる。 じわじわと身体全体の艶やかさは増していき、背中やわき腹の線もさらに締まってトッ プバストとの対比が非常にいい感じになってきている。胸の先の方もさらに張力を増して もう一段持ち上がり、サイズも大ぶりになっていく。 細まっていた髪は光沢の鞘におさまることによって、つややかでしなやかに変化してい く。この状態ならばアップにしているよりも下ろしたほうが似合うだろう。 289 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22 16 09 ID ljo8SDMi 次は、骨格に関わることなので、かなり痛みも伴うし、私にも大ごとである。 「……はあっ、はあっ」 「まだまだ、次は身長よっ」 先ほどまで母の肩に置いていた手を、今度は腰にあてがい、一気に念を込める。 びくん、びくん、と母の白く輝く太ももとふくらはぎは、ぐんぐんと伸びて私と母との 身長差はみるみる逆転していく。 「うっ……ふふ、すごいよママ。すごい脚線美だよっ」 母の肉体のバランスは、脚部を中心にすらりと引き伸ばされて、今や174センチの完 璧体型である。今や私の顔などは彼女の胸の下にある状態なのだ。 「さあ、これで出来上がりよ、ママ。こっちの鏡に映してよく見てみてよ」 私は母を姿見の前へとぐいぐいと押しやってその出来栄えを確認することを促した。 「あ……はあ、これが……私なんだぁ」 母はちょっとだけ、陶酔した様子で自分の身体に見とれていた。 先ほどまでは、ショーツの上にはみだしたお腹の肉を乗っけていたおばさんだったのに 今やボンッキュッボンの完全無欠のモデル体型である。 弾力のある胸を両手で触ってみると、ピンク色の突起物がまるで鳥のくちばしのように ぴっぴとその向きを変えていく。おそらくその胸の深い谷間にならば携帯電話をはさんで も絶対に落ちる心配はないだろう。 ウエストもただ細くなっただけではなく、質の良い筋肉で引き締められているためにそ の姿勢がとても良く制御されるのである。モデルにとっての必須条件である。 そしてショーツに包まれたヒップもまた圧巻であった。さっきまで無理やり押し込めら れていた弛んだ無駄肉たちは全て消え去り、ハリのある美尻になっている。太ももから繋 がるラインの美しさはまさに至高の彫像のそれであった。 290 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22 16 59 ID ljo8SDMi 「すごいよ、ママ。これなら絶対に今度のショーも成功間違いなしだよっ」 すると、私の言葉にはっと、現実に引き戻された母は、私の姿を見て、それからとても 悲しい顔をして、 「私は……辛いわ」 そして、少しだけ、涙を流した。 「私はいつも、あなたのこと、利用しているだけなんじゃないのかって、思うのよ」 母の、気持ちはわかるのだ。 私だって、鏡を見ればぞっと、震え上がらずにはいられない。 母に若さと美しさとを与えた後の私は、145センチの胴長短足の肥満体型である。 およそティーンエイジャーにはあるはずもない白髪が頭のいたるところでチラチラと目 立って、そして顔にも細かいシミや皺が浮き出した状態なのだから。 身体を動かせば、わき腹やお腹にせり出した無駄なお肉がゆらゆらと動くし、自慢だっ たはずのバストラインも消失し、今は小さいからこそ垂れずに済んでいる、という困った 乳に変貌しているのだから。 だけど、だ。だけど、なのだ。 「大丈夫よ、ママ。だってこれは私の望みでもあるんだもの」 母は、赤くなった顔を上げた。 「大きな舞台で、大好きなママがみんなから歓声を浴びて、そしてママの衣裳がそれを引 き立てるの。これからの未来でも目に浮かぶようにわかるのよ、私は」 そうだ。これは二人の共同のお仕事なのだ。 「私はママで、そしてママは私なの。だから、私たちは二人で一つなの、わかるでしょ、 だったら胸を張って、そして笑って出かけていかなくちゃ、私も悲しくなっちゃうよ」 少しだけ、私も涙を流した。 母は、私の身体をきゅっと抱きしめた。肌を通して伝わってくるそのスタイルの良さは、 少しだけ妬けた。 「分かったわ。ママは行ってくるから、そして絶対にこのショーを成功してみせるから」 母の瞳はまだ潤んでいたけれども、涙は流れていなかった。 そして、支度を済ませると母は出て行った。私は、こんな身体だから今日は外出したく はないけれども、買い置きしていた食材だけで、母の好きなものを作っておいてあげよう。 そして、ショーの成功を祝ってあげよう。そして、それが、なによりも私にとっては幸せ なことなのだから。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/250.html
SSには向いていませんが、暫定的な投稿ではこれで良さそうです。 -- (作成者) 2017-01-12 00 49 27
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/154.html
639 :名無しさん@ピンキー:2010/11/09(火) 11 37 50 ID dKkLjA7q 保守代わりの小ネタです。 『天気晴朗なれど波高し』 「ええっ!? あ、あたしに婚約者、ですか?」 にこやかに笑う「両親」の前で目をパチクリさせている少女は、現在「敷島桜華」(しきしま・おうか)と呼ばれていた……が、その名は本来彼女のものではない。 元々、彼女は山本小枝(やまもと・さえ)と言う、ごくありふれた一般庶民の娘だった。 いや、父親がリストラにあって40過ぎでフリーターのような真似をしており、母親のパートと小枝自身のバイトも足しにして、どうにかまともに暮らしていける……そんな生活レベルだ。 長女の小枝以外に、年の離れた弟妹がひとりずつおり、経済的に決して楽ではなかった。 そんなある日、バイト先のファミレスに、何の酔狂か敷島財閥の令嬢である桜華が取り巻きを連れてやって来たのである。 実は、桜華と小枝はクラスメイトとして一応の面識はあった。 もっとも、小枝にとっては「すごいお金持ちのお嬢様、いいなぁ~」という憧れの対象であり、桜華にとっては「フッ、冴えない小娘ね」といった程度の認識ではあったが。 ウェイトレスをしている小枝を見た桜華が、いつもの気まぐれを起こし、「わたくしもその制服を着てみたいわ」と言い出したのが、そもそもコトの始まりだった。 「ええっ、そ、そんなコト言われても……」 人の良い小枝はあたふたしている。店長もチェーン店オーナーの娘である桜華の突飛なワガママに苦い顔をしつつ逆らえないようだ。 ただ、間が悪いことにちょうどクリーニングに出して予備の制服などがなかったため、仕方なく同程度の身長の小枝が今着ているものを貸すことになったのだが……。 「ちょっと! 入りませんわよ?」 幼い頃から最高級の料理を食べ、適度な運動その他で鍛えられた桜華の高校1年生とは思えぬグラマラスボディに、質素な食生活からスレンダーな体型にならざるを得なかった小枝の制服は窮屈すぎたらしい。 普通なら、そこで話は終わるのだろうが……これまで事態を静観していたフロアマネージャーの諒子が、ふたりに奇妙な提案をしてきたのだ。 「では、桜華お嬢様、その制服が入る体にしてさしあげましょう」 と。 さして考えることもなく、桜華がその提案に頷いたことで、現在のようなややこしい事態に陥っているのである。 諒子の提案に対して、まるで催眠術にかかってでもいたかのように、ふたり──桜華(おうか)と小枝(さえ)はそろって頷いてしまっていた。 そのあとのことは、夢、それも悪夢のような出来事だった。 桜華から小枝に制服を返させて、ふたりが服装を整えると、諒子は懐から革製のチョーカーのようなものを取り出した。 それを彼女たちの首に巻くと、ふたりは身動きひとつできなくなる。 「は~い、ココで注目ぅ~!」 楽しそうな表情で諒子が桜華の頭部に手をかけると……まるでマネキン人形のように、ポロッと取れてしまったではないか! 同様にして小枝の頭部も取り外すと、そのまま桜華の体に載せ、シュルッとチョーカーを外す。 「あ、動ける……」 首から下が桜華になった状態のまま、足踏みしたり、両手をニギニギさせたりしている小枝を尻目に、諒子は今度はテーブルに置いた桜華の頭を小枝の体につないだ。ただし、コチラはチョーカーを外さないまま。 「ホラ、桜華お嬢様、これでキチンとこの店の制服が着れましたよ?」 「な、な、な……なんですの、コレはーーーっ!?」 茫然自失の状態から我に返ったのか、大声をあげる桜華。慌ててペタペタ体を触っているが、無論、そこにあるのは小枝の体だ。 「──「山本さん」、いくらバックヤードだからって、そんな風に大声を上げるのはNGですよ。女性としてもはしたないですし」 落ち着いた声で諭すフロアマネージャーの諒子。 「だ、誰が山本ですの、誰が!」 「もちろん貴女よ、「山本さん」。ほら、そこにも書いてるでしょ?」 諒子が指さす先、桜華の胸元にはウェイトレスらしくネームバッジが付いている。無論、そこに書かれた名前は小枝の苗字である「山本」だ。 「え……」 一瞬呆気にとられた桜華に、畳み掛けるように諒子が話しかける。 「さ、休憩時間は終わりよ。そろそろ夕食時になって忙しくなるんだから、「山本さん」もフロアに戻って頑張ってね。あ、「桜華お嬢様」のお相手は私がするから、気にしなくていいわ。さ、もぅ行きなさい!」 「は、はい……」 あれほど高慢で傍若無人なはずの桜華が、どういうワケか唯唯諾諾と諒子の指示に従い、「バイトのウェイトレス・山本小枝」としてフロアに戻って行くのを、小枝はポカンと口を開けて見ているしかなかった。 「さて……と。小枝ちゃん?」 「は、ひゃいッ!!」 微笑む諒子にポンと肩を叩かれて、思わず声が裏返る小枝。 「もぅ……そんなにビクビクしないでよ。小枝ちゃんに何かするつもりはないんだから」 見れば、諒子の表情は、先ほどまでのどこか冷たさを感じさせるアルカイックな微笑ではなく、小枝も見慣れた「優しくて頼りになるお姉さん」としての笑顔だったので、小枝もわずかに緊張を解く。 「あのぅ、諒子さん、これは一体?」 「うーん、一応ヒミツなんだけど、ま、いっか。私ね、実は魔女の家系なの」 普段なら魔法とか奇跡とかの類はあまり信じてない常識人の小枝だが、そっきのアレ、そして現在進行形で自分の身に降りかかっている事態(首のすげ替え)を見ては、信じないわけにもいかない。 「はぁ……それで、どうしてこんなコトを?」 「あの、高慢ちきなお嬢様の振る舞いに我慢しかねたから、って言うのと……それと、けなげないい子の小枝ちゃんへのご褒美、かな」 「?」 「あのね、首から下が入れ替わったこの状態だと、術をかけた私と、被術者であるあなたたち二人、そして特に二人に縁の深い家族とか恋人とかでない限り、周囲の人間は、その「体」に応じた人物として認識しちゃうのよ」 「ええっと、つまり、今の状態だと、あたしが敷島さんで、敷島さんがあたしだって、周りの人には見えるってことですか?」 「うん、大体そんな感じ。でね、小枝ちゃん、お家のことが大変なのに、いつも笑顔で頑張ってるじゃない? せっかくの機会だから、2、3日「お嬢様」として羽を伸ばして来なさいよ」 そういうことかと、小枝は諒子の意図を了解したが、素直にうなずくには気がかりなコトもあった。 「でも、敷島さんの方は、どうするんです? 彼女の性格じゃあウェイトレスは勤まりそうもないし、あたしの家のコトだって……」 「ふふ、その点も心配無用よ。ホラ、見てごらんなさい」 促されて、店の方を覗いてみると、なんとあの桜華が文句ひとつ言わずウェイトレスとしての仕事に励んでいるではないか! しかも、アルバイトなど初めてだろうに、接客態度その他もまったく問題ない。 「あのチョーカーを付けてるとね、頭の思った通りに体が動くんじゃなくて、体にふさわしい言動を頭がとるようになるの。お嬢様がアレだけキビキビ動けているのも、小枝ちゃんの普段の真面目さのおかげね」 無論、チョーカーを外した小枝の方は、とくに差し支えなく思ったとおり動けるそうだ。 「お嬢様の家には、店の外で待ってる取り巻きの人たちが連れていってくれるでしょ。クルマで来てるみたいだし。お嬢様暮らしに飽きたら、戻してあげるから、またお店にしらっしゃいな」 そう言って、諒子は小枝(ただし、周囲から見れば「敷島桜華」)を店の裏口から送り出したのだった。 「困ったなぁ……」 広いとか贅沢とか言う表現すら生温い、まさに「大金持ちのお嬢様」の部屋で、天蓋付きのベッドに腰掛けたまま、ポツリと呟く小枝。 諒子の言葉通り、店の前には敷島桜華の取り巻き(従者?)達が待ち構えており、あれよアレよと言う間に、首から下が桜華の肉体となった小枝は、リムジンに乗せられ、この敷島邸へと連れて来られた。 もっとも、諒子いわく、今の小枝はごく一部の例外を除いて他の人間には「敷島桜華」にしか見えないらしい。それは取り巻きやこの家の使用人の態度からしても間違いないようだから、この場合「自宅に帰った」というべきなのだろう。 あまりに非常識な事の成り行きに流されていた小枝だが、自室──無論、桜華の部屋のコトだ──に「戻って」ひとりになると、ようやく現状に対する認識と実感が追いついてきた。 諒子がした行為自体については責めるつもりはない。彼女自身、桜華のあまりに身勝手な言動には腹を据えかねていたからだ。 だから、言うならば桜華に対する「おしおき」の片棒を担ぐようなこの事態に協力すること自体は、やぶさかではない。 また、それなりに諒子の性格を知っているから、彼女が嘘をつく──たとえば、元に戻してくれない──ような事態も、まずないだろうと思っている。 ついでに言うなら、彼女とて苦労はしているが17歳の女子高生。普段目にすることのないセレブ(笑)の生活に対する好奇心だって、それなりにある。 では、何が問題かと言えば……。 「敷島さんのご家族に会ったら、すぐに娘じゃないってバレちゃうじゃない」 諒子の説明によれば、この魔法(の眩惑)は、「縁の深い家族とか恋人とかでない限り」通用する。つまり、逆に言えば家族にはモロバレということだ。 「そういう意味では、片手落ちな魔法だよね、コレって」 誰にも自分──「山本小枝」だとわかってもらえないというのも、それはそれで恐い話ではあるだろうが、少なくともそちらのほうが、まだ実用的な気がする。 頭を捻ってはみたものの、上手い解決法が浮かばない小枝だったが、ふとベッドの上に放り出したポーチ(無論、桜華のモノだ)の中で、携帯電話が鳴っているのに気がつく。と言っても、通話ではなくメールの着信音のようだが。 一瞬躊躇したものの、思い切ってケータイを開く小枝。折よく、と言うべきか、今着信したメールは諒子からのようだ。 ──心配性な「お嬢様」に朗報! コッチの「山本さん」のチョーカーには偽装機能が装備されてるから、山本家に帰っても心配ありません。たぶん、ソッチもね! 「そっか。そーいう問題もあったよね、確かに」 チョーカーによって「山本小枝」っぽく行動を制限されているとは言え、あの顔の少女が山本家に帰れば確かにひと騒動あったろう。 その心配がなくなったのは良かったが、しかしコッチはどうすればよいのだろう? 小枝はチョーカーを外してもらっているのだが……。 小枝が首を傾げているところにノックの音が聞こえた。 「お嬢様、環です」 「あ、はい、どうぞー」 声からして、出迎えてくれたメイドさんのひとりだろうとアタリをつけて、入室を許可する。 「失礼します。お召し替えをお手伝いに参りました」 (おめしかえ……って、ああ、着替えのことか) 本来なら、「子供じゃないんだから、ひとりでできます」くらいは言うのだか、あいにく今の小枝は「桜華」として認識されているのだ。 下手に断って不審を抱かれるよりも、素直に手伝ってもらう方がいいだろう。実際、小枝には、この部屋の何処にタンスがあって、何を着たらいいのかもよくわかっていなかった。 「ええ。それじゃ、お願い」 できる限り桜華っぽく振舞おうと、横柄に返事したつもりなのだが、メイドの環さんは一瞬目を見開いて驚いたようだ。 (アチャ~、何か失敗したかなぁ?) とは言え、何が間違ったのかわからない小枝にとっては、そのまま流すしかない。 後日、仲良くなった環に聞いたところ、 「かつてのお嬢様は、普段は「お願い」どころか、返事さえロクにしてくださらない、それどころか「遅いわよ!」なんて文句ばかりおっしゃる方でしたから……お召し替えの最中も、いろいろ気を使ってくださいましたし」 と、聞かされて、「あの人、どんだけ高飛車なのよ」とドン引きすることになるのだが、それはまた別の話。 とりあえず、外出用の凝ったドレス(としか思えない服装)から、比較的ゆったりした着心地のよいワンピースへと、小枝は着替えさせてもらった。 「その……お父様とお母様は?」 ついでに、「毒を食らわば皿まで」という心境で、両親について尋ねてみた。「お父さん、お母さん」ではお嬢様らしくないか、と少し気取った呼び方をしてみる。 「はい。先ほどお嬢様が外出なさっている間に、ご連絡が入りました。予定どおり、明後日の夜に帰国されるご予定だそうです」 「! そ、そう」 (ハァ~、よかったぁ) 国外出張か何かだろうか? どうやら、ふたり揃って不在らしいのは、小枝にとって幸いだった。 「お嬢様、本日はお食事は何時ごろになさいますか?」 内心ホッと胸を撫でおろす小枝に、環が尋ねる。 一瞬ワケがわからなかったが、どうやらここの桜華は好き放題な時間に夕飯をとっているらしい。 母なり自分なりが夕食を作り終えた時が夕飯時……という山本家にはない習慣だ。 「えっと……何時頃から食べられるの?」 だから、つい、そんなことを聞いてしまう。 「は?」 「いや、だから、厨房の方でいつ夕食の用意ができるのかな、って」 言いかけた言葉が尻すぼみになる。 おそらく、いや間違いなく、本物の桜華なら、そんなコトを気にしたりせず、自分の希望を通すのだろうが、諒子に「苦労性」と評された小枝には無理な話だった。 「は、はぁ……料理長に聞かないと正確な時間はわかりませんが……おそらく、19時ごろではないか、と」 午後7時なら、山本家の夕飯時と大差はない。 「じゃあ、その時間でいいわ」 「はい。では、用意ができ次第、お迎えに参ります」 「ええ、お願いするわね」 三度面喰ったような表情を披露しつつも、瞬時に居住まいを正し、環はいかにもメイドらしい一礼を残して、桜華の部屋を出て行った。 ──バタン! 扉が閉まり、ドアの向こうの気配が遠ざかるのを確認してから、小枝はボフンとベッドの上に寝転がる。 「ふわぁ……き、緊張したぁ」 どうやら、いくつかミスはしたみたいだが、とくに怪しまれるまではいってないようだ。 「それにしても、ご両親が海外旅行中なのは運がよかったなぁ」 メイドの環によれば、明後日の夜に戻ってくるらしい。 (てことは、明後日の午後に戻ればいいわね) たしか、明後日の土曜も「山本小枝」は午後にバイトのシフトが入っていたはずだから、その時にでもファミレスに行って諒子に頼めばいいだろう。 そう考えると、今までイッパイいっぱいだった小枝の心にも、多少余裕めいたモノが生まれてきた。 他の人間の反応を見る限り、自分はあくまで「敷島桜華」として認識されてるみたいだし、2日間くらいなら「お嬢様ライフ」を、堪能するのもいいかもしれない。 ふと、視点を下方に移動させると、仰向けになってもほとんど形の崩れないふたつの膨らみが、目に入って来る。 「お、おっきぃ」 ──ゴクリ……… なぜか、思春期の少年みたいに唾を飲み込んでしまう小枝なのだった。 #とりあえずは、ここまで。無論、次回は「サエちん、お嬢様のグラマラスボデーを探求するの巻」です。貧乳娘が突然巨乳になったら、やっぱりいろいろ興味津津だと思うんだ。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/222.html
853 名無しさん@ピンキー [] 2012/06/25(月) 00 43 35.52 ID 0LJsI7Gz Be ー肉体と頭脳の背反ー 昔から天は二物を与えないと言われるが、確かに事実かも知れない。 才能を二つ併せ持つ物など世界中にどれだけ居るのだろうか? とりわけ比べられるのは容姿と頭脳である。 才色兼備という言葉が存在するものの、やはりそのような人物は現実には成立しにくいだろう。 これから語られる物語は、外面と内面、二つの才能と魅力の間で揺れ動く少女の悲劇である… ここに一人の少女がいた。 名前を白姫 なつき という 高校二年生の春を迎えた彼女の美徳はその頭脳にあった。 幼い頃より天才と呼ばれ、クラスでは常に成績トップ、運動はさほど得意では無かったが容量が良かったため優秀であった。 その華奢で可憐な容姿と儚げな雰囲気も手伝って、男子からは羨望の的だった。 彼女は彼女で才能や容姿を鼻にかけず、周りからも慕われ、何一つ不自由なく生活していたはずだった。 しかし、そんな彼女の心を曇らせる、唯一にして最大の悩みがあった… それは「女らしさ」である。 なつきは自分の容姿を気に入っていないわけではなかった。 周りから慕われ、仲良く出来る要因の一つはこの容姿であると自覚していたし、親が産んでくれたこの姿形を憎む理由など見つからなかった。 しかし、思春期も末期に差し掛かろうとした今になって、なつきは自分の体の発育の悪さを不安がっていた。 人当たりの良いなつきも、さすがに他の女子たちと自分の身体を比較してしまっていた。 個性である、と片付けてしまえばそこまでだったが、やはり女の子として納得出来ない気持ちがあった。 そのモヤモヤした感情が、なつきに暗い影を落とし、ある結末へと導いていく… 『…りたくない…?』 石の中から意識が流れ込み、なつきの精神に直接語りかけてくる。それ自体、非現実的であり、否定されても良い事象だったが、考えている余裕など無かった。 『…変わりたくない?貴方はいま、自分自身に満足していない。変化を望んでいる…』 「ど、どうして分かるの?」 『ふふ…そんな事気にする必要は無いわ。わたしがあなたの希望をかなえてあげる。このままわたしを家に持ち帰るのよ』 「そ…そんな……」 石から流れてくる流れてくる何者かの声は怪しい女性のものであった。 なつきは怖かった。今まで経験も予想もしたことのない、いま自分自身に起きている現象にただ怯えるしかなかった。 しかし、彼女の戸惑いと畏怖の感情の奥底では、その石が発した言葉に興味をそそられる本能があった。 『さあ…何を迷う必要があるの?あなたは目の前に美味しそうなケーキがあって、それを食べるかどうか考えてしまう人なのかしら…?』 挑発、煽り。 こんな時でもなつきは冷静だった。この石は誘っている。何か自分の良いように事が運ぶよう促している、そうなつきは考えていた。だが、それでもなお、石が語った『変化』『希望』、それらの事柄に魅力を感じていた… 『ふふ…分かってるじゃない…』 無意識に家へと歩みを進める。 ゆっくり…ゆっくり…家へと近づいていく… 辿り着いた自室… 今までそんな事はしたことが無かったが、後ろめたさを覚えながらも扉に鍵をかけ、閉じこもる。 手が震えていた。 それは慄きからか、それとも内なる高揚感からか… 『うん…わたしを連れてきてくれてありがとう…まあこれも運命、かしらね』 「運命…?」 『そうよ…あなたと出会えたことに感謝しなくちゃね…』 「わ…わたしを惑わさないで!それよりもさっきの願いをかなえる事について詳しく…」 『あら…何を怯えているの?』 「怯えてなんかないわ…は、早く教えてよ!」 石が言うように怯えているのか、はたまた焦っているのか…なつきは今までの人生にないほど声を荒げていた。 まるで麻薬中毒者が薬を切らしたかのように… 『くすくす…いいわ、教えてあげる。率直に言うと、貴方の才能を入れ替えてあげるわ』 「才能を…?」 『そう、才能。あなた、わたしが察するに相当頭が良いんじゃない?その知識と思考力をわたしに渡す代わりに、わたしの中に閉じこもっている力であなたを素敵な身体に変えてあげるわ…』 「え…ど、どういうこと?」 『そうね…ちょっと試してみる?わたしをおでこにくっつけるの』 「こ、こうかしら…?」 言われるがまま、なつきは石を額に近づけ、触れさせてみた。 『そうそう…じゃあいくわよ…!』 「え…ふぁっ…!?」 石が強烈な光を放ち、直後になつきの身体を異常な疼きと熱が覆った。 欲情、まさにそう形容するに相応しい脈動が駆けめぐる。 「なに…これぇ…っ…体が…ふぁぁっ…!」 『あら…我慢すること無いじゃない…あなた変わりたいんでしょ?素直になりなさい…』 「そ…そんなぁ…でもぉ…これ…はぁっ…!」 次第に視界が蕩けていく。思考が鈍くなる。ジンジンと疼く秘部…頭に響く声… 『受け入れなさい…でなければあなたは変われないわ』 変われない… 変われない…… 変わりたい…! 感情が動いた瞬間、無意識に手が大事な部分へと伸びた。 「ひぁ…!!」 触れた瞬間、より一層の熱が襲う。同時に、凄まじい快感。 「あぁ…!…すご…ぃ…!」 『良いわ…その調子よ、ほら、鏡を見てみなさい』 促されるまま、なつきは目の前にある姿見に目を向ける。 そこには、今まで見たこともなく淫らでだらしない自分の姿が映っていた。 服ははだけ、手足は脱力している。 『今からあなたは変わるわ…少しだけね。さあ続けるのよ』 「つ…続けるって…あんっ…!?」 どくんっ、と脈うつ鼓動と共に、また情が燃え上がる。 「つっ…ふぁ…かわり…たぃ…!…だから…くぁ…!」 感情に身を任せ、再度秘部に手をかける。 性を感じているのか、徐々に愛液が溢れていき、触れる度にぐちょぐちょと卑猥な音を立てる。 「あぁ…気持ち…ぃ…!」 なつきが快楽を受け入れ言葉にした瞬間、なつきの身体全体に微妙な変化が現れた。 まずは足。 下手をすれば胴体より短く見えても仕方ないようなそれが、長さを増していく。投げ出されて床に放り出されている足がにょきにょきと伸び、数センチ伸びたところで止まる。 そして手。 子供のように丸みを帯びていた指先が、引き伸ばされるように少しスラリ、と伸びた。 腕全体も長さを増す。 胴体。 膨らみが全く無かった胸部に、僅かながら膨らみが生まれ、反対に腰は少しぺこり、とへこみ、服に起伏をもたらす。 身体の疼きがおさまったころ、変化は終わっていた。 「はぁ…あぁん…っ」 くらい部屋。 「んっ…くぅ…」 押し殺すように喘ぐ声。 「やぁ…くぁ…!」 時に激しく秘部を弄ぶ。 「あぁ…ふぁ…っ…!」 そして独りで頂点に達する… はぁはぁ、と荒い息遣いと共に余韻に浸るなつき… 自慰行為をする、それ自体は初めてでは無かった。 しかし少女は、明らかに以前とは違う感覚を意識した。 精神的にも、肉体的にも… そして、その傍らで光る何か… …なつきがこのような激しい自慰をするに至った経緯は、その日の学校での帰り道に端を発する。 いつも通り友と仲良く帰路につき別れたのち、一人で歩いていた時の事である。 いつも通り、しかし目の前、一本道の真ん中にそれは落ちていた。 「あれ…?何かしら…」 近づいて観察してみると、それは真っ黒な石のようであった。 普段なら気にも留めない道端に転がっている石ころ同然である。 しかし、なつきはそれに異様に惹きつけられた。そして、手を伸ばして触れようとし… キン…! 「きゃ…っ!?」 掴んだはずなのに、瞬間、眩い光を放ち、手から弾き出され、再び地面に転げ落ちる「何か」。 「なに…これ…」 恐怖。不気味なもの。 なつきは不安に駆られた。 「何か」は、地面に落ちてもなお、妖しい光を放っていた。 怖い、はずなのに、また手に取りたくなる。 何かの暗示に掛かったように、再度手を伸ばす。 キン…! 閃光。しかし今度は離さなかった。 「つっ……きれい…」 その光を見つめ、呟く。 そして、虚ろな目線を宙に向ける。 余韻に浸りながら、なつきは火照った体を起こし、姿見に全身を映してみた。 そこには、別人のような自分がいた。 手足が幾分か伸びたことにより、まるで身体全体が引き伸ばされたようにスラっとして見えている。 そして何よりも胸と腰の起伏である。 それは僅かなものだが、有るのと無いのとでは大違いで、なつきが今まで自分に感じた事の無かった女らしさが放たれていた。 「これが…わたし…なの…?」 困惑と感動が入り混じり、途切れながら口にするその言葉。 そして喜び… 『うふ…わたしの力は気に入った?今のはほんのお試し程度よ。本気でやればもっと凄いわ…どう?やってみない?』 「も…もっと…」 なつきは石の言葉に引きつけられた。たった今起こった自分の身体の変化を目の当たりにしては、自制など効くはずが無かった。 もっと素敵になれる、そう考えただけでなつきは胸が高鳴り、早くそうしたいという気持ちがどんどん膨らんでいった。 なつきの頭の中から吸い取られていた、大事な何かとは逆に、欲望は増大していく… 今度は促されるまでもなく、自ら額に石を押し付ける。 そして念じる。 さっきよりも強く… 『ふふっ…良いわね…力が漲るわ…!いくわよ?』 「う…うん…!」 なつきが頷いた瞬間、石から迸るような凄まじい光が放たれる。 「ふあぁっ!?」 そして先ほどとは比べ物にならないような、電撃にも等しい快感がなつきの身体全体を駆けめぐる。 しかし、なつきはそれを拒む事なく存分に享受する。 「すごぉい…!すごぃのぉ!」 淫らな声をあげながら、変化して膨らんだばかりの僅かな胸の隆起を片手で撫で回し、もう片方の手を秘部へ差し込む。 荒々しく、そして甘美に自らを弄ぶ… 『あらあら…最初とは随分反応が違うじゃない…これがあなたの本性なのかしら?ならあなたは、今からその本性に相応しい姿になるのよ。素敵なことじゃない…』 「あぁっ!きもちぃ…!いいのぉ!はぁん…!」 なつきが言葉を発した瞬間、ビクッと身体が跳ねた。 そして、急速に変化が始まる。 まず先ほど伸びた脚が更に伸びていく。 今度はただ伸びるだけでなく、細かったその足に適度に肉がついていき、美しい脚線美を形成する。 太ももと尻にかけては顕著で、ぐんぐんと肉が盛り付けられてゆく。 ただ肉が付くだけでなく、ヒップはキュッと引き締まり、上を向いた美しいラインが作られる。 膨らんだ尻はスカートに収まりきらず、大半がはみ出してしまっている。 「あはぁん…!」 腰は、先ほどはへこんだだけだったが、今度はくびれが生まれていく。ウエストラインが絞られていき、妖艶さを醸し出す。 胸は、空気でも入れているかのようにぐんぐんと膨らんでいく。やがて乳房と言える大きさになり、存在さえしなかった谷間を形成し、深さを増してゆく。大きくなるもそれは垂れる事なく存在を誇示し、頂きはツンッと服の下から突起する。 「おっぱい…!あは…おっきぃ… !」 急激な変化は終わり、次第にじわりじわりと終わりを迎えていくが、まだ終着点ではない。 身体全体が艶やかさを増していき、肌の色が抜けるような白から健康的な肌色になり、さらに濃くなっていく。 小麦色になったところで変色をやめ、体から浮き出た汗でテラテラと肌が妖しく光る。 「あは…とってもえっちぃ…!」 先ほどからなつきが発している言葉からは知性が失われ、どこか甘ったるく、男を誘うような口調と声色に変わっていた。 その声が発せられる口も、薄かった唇に適度に肉がつき、エロスを漂わせる。 顔全体からも儚げな印象は消えていき、垂れていた目が少し吊り気味になり、鼻筋がスッと通り、小悪魔的な顔立ちに。 「うふ…あははっ…」 最後に髪は青みがかった黒から、チョコレートのような茶髪になり、さァっとウェーブがかかる。 身体の熱が徐々に冷めていき、変化は完全に終わった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/277.html
管理人さんがスレからいなくなってしまったようです。トップページも更新できなくなってます。 -- (名無しさん) 2017-04-13 20 54 45
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/62.html
投稿日:2009/09/19(土) 冬の夕方、街は既に暗くなっていた。 寒波は多少和らいだらしく、いつもなら身を切り裂くように吹いてくる北風も 今日は少しだけマシになったような気がする。俺の錯覚かもしれないが。 「あーやれやれ、寒いなぁ」 俺の右手には夕食の入ったビニール袋がぶらさがっている。 もちろん中身はコンビニ弁当。こう寒いと寄り道して外食する気にもなれない。 それに今日は家で飯を食うのは俺一人、わざわざ作るのも面倒だ。 そんな訳で俺は大学が終わると弁当だけ買って真っ直ぐ家に帰ることにし、 この寒空の下を一人でとぼとぼ歩いているのだった。 分厚いセーターにマフラー、毛糸の帽子に手袋と完全装備だったので そこまで身に染みる寒さという訳ではなかったが、それでも寒いものは寒い。 駅からうちのマンションまでは歩いて十分ほどしかないが、充分体が冷えてしまった。 エレベーターを下りてカギを取り出し、無造作に自宅のドアを開ける。 「たっだいまー」 暖房の効いた空気に優しく身を撫でられ、思わずくしゃみが飛び出した。 玄関にはごつい女物のブーツが鎮座している。どうやらまだ出かけていないらしい。 俺はリビングのドアを開け、そこにいた女に話しかけた。 「なんだ姉貴、まだ行ってないの?」 壁にかかった時計を見ると既に五時過ぎ。いつもの姉貴からすればかなり遅い時間と言えた。 どうせもう卒業が決まって大学なんて行かなくてもいいから、時間はたっぷりあるはずなんだが。 大きく息を吐き出しそう問いかける俺に、彼女の罵声が飛んできた。 「遅いっ! このグズ、何やってたの !?」 「はあ?」 意味がわからない。今日は寒いから講義が終わって直で帰ってきたってのに、 なんで姉貴に怒られなきゃならんのか。 上着を脱いで声の方向を振り向くと、流しにもたれかかった長身の女が俺をにらみつけていた。 ところどころ黒を残したロングの茶髪は肩まで垂らされ、蛍光灯の光を浴びてきらきら輝いている。 つり上がった眉は細く、いつも描くのに気を遣っているらしかった。 目つきは悪いが、家族以外の男の前ではそれなりに良くなるらしい。不思議なものだ。 名前はよしの、由乃と書く。俺の同居人にして尊大極まりない姉貴だ。 ちなみに俺の名は大和。この名前のせいで幼い頃は宇宙戦艦と呼ばれていた。 二人っきりの姉弟だが、もし弟か妹がいたら名前はイズミにでもなっていたのだろうか。 うちの親はどうにも安直というか、あまり子供の名前に悩まないような親だから困る。 しかし姉貴が尊大なのはいつものことだが、なぜ俺が怒られないといけないのか。 訝しがる俺だったが、和室の方からとてとてと歩いてきた女の子を見て合点がいった。 「おにーちゃんおかえりー!」 「なんだ志麻ちゃん、来てたのか」 パープルのワンピースの上に可愛らしいピンクのジャケットを羽織ったこの少女は お隣に住んでる女の子で志麻ちゃんという。今年小学校に入ったばかりだ。 実に素直であどけなく、俺や姉貴によく懐いているのでこうして遊びに来ることも多い。 まあお隣の夫婦が共働きであまり子供に構ってやれなかったり、 外ヅラだけはいいうちの姉貴がお隣と妙に仲が良かったりと、その辺はいろんな事情があったりする。 この子がここにいるってことは、また面倒見るように頼まれたんだな、姉貴のやつ。 感心したものか呆れたものか、とにかく俺は姉貴に確認した。 「姉貴、今日も飲み会じゃなかったっけ?」 「そうよ、だから急ぎのとこをあんた待ってたのに! 早く帰って来なさいよ!」 さすがに傍若無人な姉貴でも、預かった女の子をひとり置いて出かけるのは良心がとがめたのだろう。 こういうところは常識があるというか無駄に外ヅラがいいから、 そのとばっちりを受ける俺にとってはなかなか困ったものだった。 俺は肩をすくめて姉貴に言い返した。 「それならメールくれりゃよかったのに。志麻ちゃん預かるって聞いてなかったからさ」 「メールしたわよ! あんた見なかったの !?」 「あれ?」 ポケットからケータイを取り出すと画面が真っ黒になっていた。そう言えば昨日 通話しまくって、充電するのを忘れていた気がする。でもなんでよりによってこんな時に……。 俺は自分の迂闊さと運の悪さを嘆いたが、姉貴は許してくれなかった。 「はあ? ケータイが使えませんってあんた猿か何か !? ただでさえグズなのに、ちょっとは姉さんの役に立とうとか思わないわけ !?」 うちの姉貴は口が悪い。ついでに言うと性格はそれ以上に悪い。 だが顔はそこそこで外ヅラも良かったので、周囲からは人気があるようだ。 俺はそんな姉貴に虐げられつつ二十年も生きてきたので、まあいろいろ大変だった。 大学に入ったら一人暮らしをしたかったのだが、あいにく行きたい大学に ことごとく落ちた俺が受かったのは、姉貴の通う三流大学だけ。 ちょうどいいやということで親からは姉貴のマンションに一緒に住むよう命じられ、 気がつけば姉貴に下僕として仕えてもう二年になろうかとしていた。 姉貴は今年で大学を卒業するが、既にそこそこの商社に自分の席を確保している。 この就職難でよくやったと思う。やはり外見と物怖じしない性格のせいだろうか。 俺にとっては小さい頃から鬼でも悪魔でもある姉貴だが、そういうところは素直に尊敬する。 それはとにかく姉貴もいつまでも俺を罵ってばかりはいられないようで、 あたふたと慌てて身支度を整え出かけていった。 「七時に志麻ちゃんのお母さんが迎えに来るから、それまでちゃんと相手したげなさいよ! あとあたしいつ帰れるかわかんないから、お風呂はいいわ」 「はいよ、いってらっしゃい」 ――バタン! こうしてうちの姉貴は嵐のように去っていった。 「……おねーちゃん、出かけちゃったの?」 玄関に突っ立っていた俺のもとに志麻ちゃんがやってくる。 首筋が隠れるくらいに伸ばした髪は姉貴のとは違い、真っ黒でつややかだった。 「うん。今日は帰ってこないだろうから、お兄ちゃんと遊ぼうか」 「いいよ、何して遊ぶー?」 子供は嫌いじゃない。抱っこしてやったりお絵かきを見てやったり、 俺は志麻ちゃんのお母さんが迎えに来るまでこの子の相手をしてやった。 その日、予想通りのことだが姉貴は帰ってこなかった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ――ドンドン! ドンドン! 次の日の昼前、ドアを乱暴に叩く音で俺は目を覚ました。 大学の授業は昼からだし、今日は大して重要でもない講義ばかり。 寒いから自主休講でも構わないかな、と思っていた頃だった。 もぞもぞと布団から這い上がり、ドアに声をかける。 「はーい、どなたー?」 俺はTシャツと短パンという格好で寝床に入っていたから出るのは少しためらわれたし、 いきなり不用心にドアを開けることに対する抵抗はないでもなかったが、 どうせうちには盗られるものなんて何もないと開き直って戸を開ける。 そこには不機嫌極まりない顔をした姉貴がいて、じっとこちらをにらみつけていた。 「何だ姉貴か。カギくらい持ってるだろ? なんで開けないんだよ」 「……うるさいわね」 そう言ってふらふらと俺の横をすり抜け、和室の布団に倒れこむ。たちまち部屋は酒臭くなった。 どうでもいいけど、そこ俺の寝床なんですけど。あんたには立派なベッドがあるでしょうが。 だが俺の思いも空しく、姉貴は布団にうつ伏せになったまま不満タラタラのご様子だった。 いつもは酒量をわきまえる姉貴が珍しく二日酔いらしく、辛そうな声で愚痴をこぼし続ける。 発言が支離滅裂なのでよくわからなかったが、要するに飲み会で何かあったようだ。 正直言っていい気味だとは思ったが、いつまでも放っておく訳にもいかない。 寝転がる姉貴の肩をゆすり、努めて優しい言葉をかけてやる。 「姉貴、ほら着替えて。シャワー浴びたらすっきりするから」 「うるさい、余計なお世話よ。ほっといて」 実に可愛くない発言である。まあ姉貴らしいっちゃらしいけどさ。 「しかもそこ俺の布団だしさ。寝るなら自分のベッドで寝なよ」 「どうでもいいでしょ。いいからあっち行け」 「姉貴、姉貴ってば」 「…………」 駄目だこりゃ。手の施しようがない。 困った俺はとりあえず昼飯にしようと湯を沸かし始めた。 さてラーメンにするかスパゲッティにするか。米の飯は残ってないしな。 「あーうざい。あいつ何よ、信じらんない……」 隣の和室では相変わらず姉貴の愚痴が続いている。二日酔いなんだから寝てりゃいいのに。 たった二つの年の差なのに、なんで俺は姉貴に逆らえないんだろうか。 散々好き勝手言われてこき使われて、褒められるどころか毎日が罵倒の嵐。 性格と言ってしまえばそれまでなんだが、いい歳した男としては何とも情けない話だった。 とはいえ姉貴も就職したらこの部屋から出て行くはずだし、それまでの辛抱なんだけどさ。 沸騰した鍋に麺を入れつつ、俺は野菜をきざみ始めた。 夕方になっても姉貴は起きてこなかった。 晩飯は食うんだろうか。食うなら二人分のメシを作らなきゃいけないし、 姉貴が食わないなら俺は適当にコンビニ弁当で済ませるつもりだった。 布団で横になった姉貴を揺り起こすが、やはり機嫌は直っていなかった。 「姉貴、姉貴。メシどーすんの。食うなら何か作るけど」 「……どうでもいい」 「どうでもいいって何だよ。食うの食わないの」 「……それじゃ、何か作って」 姉貴は濁った眼差しで俺を見上げた。あまり目を合わせていたくない瞳だ。 俺は内心の苛立ちを隠すように立ち上がり、近くのスーパーに買い物に行こうと 上着やマフラー、手袋を用意した。今日も寒いからな。 本当は冷蔵庫にあるもので一食分くらい作れなくもなかったが、 あの状態の姉貴と二人でいるのが嫌だったこともあり、俺は仕方なく家を後にした。 やれやれ、よくわからんけどあんなんじゃこっちにまで負のオーラが移っちまうよ。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ この寒いのにスーパーの中はそこそこ混んでいた。 ここは夕方六時を過ぎるとタイムセールだとかでかなり安くなるのだ。 俺は主婦ほど食費にこだわる男でもなかったからあまりいい気はしなかったが、 とりあえず目当ての惣菜と卵、数種の生野菜を確保し早々にレジに向かった。 布団を占領して腐り続ける姉貴のせいで俺も不機嫌だったので、 ビニール袋に品物を突っ込むときに思わずため息が漏れた。 「……ふう」 慣れてることとはいえ、姉貴に振り回されるのはやはりしんどい。 どうせ後でまた俺に八つ当たりしまくるに決まっている。それを思うと気分が重かった。 そんな哀愁の俺に、横から声をかけてくるやつがいた。 「どうしました。うかない顔ですね」 「なに?」 突然のことに隣を振り向いた俺は――絶句した。 歳は俺よりいくつか下、制服は着ていないが多分高校生くらいだろう。 知り合いでも何でもない少年が俺のすぐ横に立って、じっとこちらを見つめていた。 だが俺が驚いたのはいきなり声をかけられたことじゃない。 そいつの顔、あまりにも整いすぎた美貌に驚愕していたのだ。 俺の周囲どころか、テレビや雑誌で有名な俳優やモデルにもこんな美形の男はいやしないだろう。 端正すぎる顔は仮面のように人間離れしていて、いっそ作り物かとさえ思わせる。 そんなやつが爽やかな笑顔を浮かべて俺の隣にたたずんでいた。 こんな美少年がその辺のおばさんたちの目に入らないはずはないが、周囲の客は皆 俺とこいつのそばを通り過ぎ、こちらに視線を向けようともしない。 あまりの動揺に俺は返事をすることもできず、呆然としてこいつを見つめ返すだけだった。 立ちすくむ俺に、透き通るような少年の声がかけられる。 「大変そうですね。何かお悩みですか?」 「あ、ああ……いや――」 何でもない、と言おうとした俺を遮って少年が続けた。 「食材、一人分にしては多いですね。今日は友達か恋人とご一緒ですか」 「…………」 「ひょっとして、さっきのあなたのため息はそれが原因ですね?」 「い、いや……」 何なんだこいつは、いやに馴れ馴れしい。もしかして高校生探偵か何かか。 本来なら怒鳴りつけてこいつをどかせる場面だったが、なぜか俺の体はそうせずに 少年のにこやかな笑みにすっかり毒気を抜かれてしまっていた。 「ちょっとお話をうかがいましょうか。手短で構いませんから」 そう言って微笑む少年に逆らうことができず、俺は気がつけば今の状況と、 普段から抱いている姉貴への不満を残らずこいつに喋ってしまっていた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 店を出た頃には夕方というより夜になっていた。 「う、外に出るとやっぱさみーな……」 北風に吹かれつつビニール袋をかかえて家路につく。 あいつのせいで少し遅くなってしまったが、姉貴はどうしているだろうか。 大人しく待っててくれればいいが、また俺に当たってくるかもしれない。 それにしてもあの少年、普通の人間とはどこか違った不思議な雰囲気を持っていた。 俺の話にうんうんとうなずいて同情してくれたっけ。そのまま帰っちゃったけど。 何者だったのかよくわからないが、まあ過ぎたことはどうでもいい。 とにかく急いで帰って晩飯にしないとまた姉貴に怒られる。 寒さと恐怖にブルブル震えながら、俺は自宅に向かって急いでいた。 「ただいまー! 姉貴、遅くなってごめん! 今飯にすっから」 姉貴はきょとんとした顔で布団に座っていた。機嫌を損なった様子は全くない。 良かった、この調子だと理不尽に怒られることはなさそうだ。 そう安心した俺に、立ち上がった姉貴がいきなり飛びかかってきた。 「おにーちゃんおかえりぃっ!」 「――――っ !?」 とっさに何が何だかわからんかった。 俺は中肉中背だが姉貴はかなり長身で、ヒールを履くと目線がほぼ同じ高さにくる。 そんな姉貴が満面の笑みを浮かべて俺に抱きついてきた訳で、危うく倒れるところだった。 しかし、これは一体どういうことだろう。 家族の前では唯我独尊を地でいくあの姉貴が、俺に抱きついてあまつさえ頬ずりまでしてくるのだ。 自慢じゃないが物心がついて以来、俺はこんなことをしてもらった覚えがない。 また酔っ払っているのか、それとも二日酔いが治っていないのか。 俺は何とか姉貴を振りほどき、テーブルに置いたビニール袋の中身を広げだした。 飯は出かける前に炊いていったので大丈夫、いい感じに炊きたてだ。 「ほら姉貴、飯。から揚げ買ってきたから」 「えー、今日はおにーちゃんとご飯ー?」 姉貴は今まで見たことがないほどのにこにこ顔で楽しそうに笑っている。 これはひょっとすると、病気か何かで頭がおかしくなっちまったのだろうか。 椅子に座った姉貴の額に手を当ててみるが、特に問題はなく平熱のようだった。 外から帰ってきたばかりの俺の手が冷たかったらしく、姉貴はその手をとってまた笑う。 「おにーちゃん、手、冷たいよ! あははは!」 「姉貴、ホントにどうしたんだ……大丈夫か……?」 酒の飲みすぎで脳溢血にでもなったのか。救急車呼んだ方がいいだろうか。 心配する俺を気にもせず、姉貴は無邪気な笑い声をあげてほかほか湯気のたつ茶碗をとった。 「じゃ、いっただっきまーす!」 ところが心なしか箸の持ち方がおかしい。しかも食べながらよくこぼす。 いくら俺の前でも、あの姉貴がここまでだらしなくなるはずはないんだが……。 俺が本気で心配になってきた頃、うちの呼び鈴が鳴った。 ――ピンポーン……。 「あ、はい?」 “大和! 私よ私! ここ開けてえっ!” 「……えーと、志麻ちゃん?」 戸惑いつつもドアを開けると、元気一杯の女の子がうちに飛び込んできた。 可愛い顔も綺麗な黒髪もいつも通り。お隣の小学生、志麻ちゃんだった。 しかし志麻ちゃんはどこか慌てた様子で靴を脱ぐと、俺が止める間もなく 勝手にうちに上がり込み、リビング兼ダイニングのドアを開けていた。 「ああっ !! やっぱり私、私がいるっ!」 「あれ? あたし?」 姉貴と志麻ちゃんは大声をあげてお互いを指し合う。 ……はっきり言って俺には、何が何だかさっぱりだった。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/145.html
502 名無しさん@ピンキー [sage] 2010/09/13(月) 21 48 24 ID Wq6/af4q Be 40年です。 長らくの規制が解けたようなので、ひさびさにSSいってみましょう。 『女城主』 ※本文中に使われる『女城主』は実在した特定人物の呼称ではなく、架空のものです。 大物俳優の大量投入の鳴り物入りで放映された連続歴史ドラマシリーズ『女城主』だった が、平均視聴率は物語中盤、第10話を終わった時点で平均5.2%と低迷している。そし てその悪因となるのが主演の女城主を演じる鷹羽沙耶の演技力不足であろう。確かに、彼女 は近来の若手女優の中では出色の技量ともてはやされているが、他のベテラン共演者のレベ ルから見れば、まだまだ未熟と言わざるを得ない身のこなしや台詞繰りで、なまじその端麗 な美しさだけが先行するイメージである。これでは視聴者は女城主お延を見ているのか、そ れとも単に鷹羽沙耶の和装姿を見せられているのかわからなくなっているだろう。 また、共演者のレベルが高いとは言いながら、俳優としての旬をとうに過ぎたものを平然 と使うところについても指摘をせねばなるまい。中でも女優Kなどは名ばかりは大物であっ てもその動きはやや緩慢で精彩を欠いてきている。往年の彼女のファンであったならば、な おさらその悲哀ぶりが滑稽に映ることだろう。 ともあれ、『女城主』も残り9話を残すばかりとなったが、ここから先にはよほど大きな テコ入れでもしないことには再起の目は残ってはいないのではないだろうか。 (ある週刊誌にて辛口コメンテーターの寸評より) 「と、まあ、どの雑誌を見ても軒並み評価はこんなもんだってことよ」 緊急に設けられた会合の中、監督は監督でも工事現場の監督のようにいかつい図体の撮影 監督は鼻毛をぶちぶち抜きながら淡々とした口ぶりをみせていた。 「なにしろ、数字が出ないのではねえ、これだけの予算を組みこんで、何をやっているって 話になるわけです」 白髪頭にチョビ髭の局事業部長はやや口調を震わせるように言葉を絞っていた。この視聴 率の低迷の責任の半分近くを実質、彼一人が負っているのだからその苦悩も察するものがあ った。 「だが、この脚本で駄目だったとは私には心外でならんよ」 脚本家はぼそり、と呟く。今まで書き続けてきたものの殆どに外れ無しとの神話を打ち立 て続けているだけに、今回の不出来についても思うところがあったのだろう。 そして、周囲の視線は一点に、一人の若い女性へと注がれる。 「……え、っと、それはつまり、私がその元凶だっていうことですよね」 やや目を伏せながらも、その態度は卑屈に落とすものではない。鷹羽沙耶は重苦しい空気 の中に辟易とした様子を隠すことも無く、ぼそりと言葉をもらした。 「いや、別に君一人の問題って訳ではないのでね……」 事業部長は、彼女の起用を強力に推し進めた経緯から擁護の口を出す。 「いいや、でもよ、沙耶ちゃんの演技に対しての酷評は多いぜ。ここから先も同じような調 子で撮影を続けていくのはまずいんじゃないかい?」 荒くれ者のように見えて、撮影監督はわりと機微を察知する能力に長けていた。 鷹羽沙耶は確かにこのドラマシリーズでは彼女自身の本来の万全な力を出せていないのだ。 それがこの不振に直結していることは覆うべくもない事実だった。 「……いいんですよ、どうせ。私なんてただの雛人形なんでしょうからね。演技下手で共演 者の足を引っ張るだけの力不足な主人公なんですからねっ!」 会議室の中に、しばしの静寂が流れた。 「おやめなさい、沙耶ちゃん。ここはあなたを責めてどうこうする場ではないのですよ」 短く刈り込んだ白髪の、70歳に届こうとする老女優が低いおだやかな声で窘めた。 「宮城さん……」 彼女は宮城小鶴。子役から始まって70作もの映画に出演したことのある実力派である。 この「女城主」では主人公の乳母の役を演じていたのだが、第8話をもって病没するために あとは回想シーンのみの登場となっているのだった。 「まだ、撮影回は13話から最終の19話まで7話も残っているでしょう。それならばそこ に全力を傾注してこそ女優じゃありませんか、それを何です、雛人形だなんて、自分を安く 売るような言葉は慎みなさい」 祖母に叱られる孫娘のように、沙耶は口をつぐんでうなだれた。 「ま、そう言いなさんな小鶴さん。サヤちゃんだって相当悩んでここまで来たんだろうから さ」 甲高い声を張ったのは、総監督の北崎だった。C調でお気楽そうな50男だったが、切れ 者として業界では一目置かれる存在だった。 「それに、この不振にはさ、小鶴さんにだって思うところがあるんじゃないのかい?」 ちらりと眼光をかがやかせて、老女優を一瞥する。 「ええ、たしかに、私もまた、まだまだ未熟だってことですわね」 正確には熟しきって傷みかけているといった方が正しいだろう。先ほどの記事の中にあっ た「女優K」とは彼女のことである。半世紀以上も女優として活躍し続けてきた彼女は、最 近になって、明らかな衰えに苦しんでいたのであった。 言葉が途切れて、一同が暗くなりかけたその時であった。 「でも、まあ、ここまでは計算通りと言ったところかな」 総監督の場違いに明るい声が響いた。一同の視線が彼へと集中する。 「んー、でも、ここから先は、我に秘策ありだよ。大丈夫大丈夫、だまって俺についてきな ってね」 そして総監督は、パンパンっと手を叩いて話し合いの終わりを告げると一同に解散を促し た。 「ああ、でもサヤちゃんと、それから小鶴さんにはここに残ってもらおうかな」 そして、三人だけが残った会議室。 「それで、監督さんの言う秘策ってのは……」 沙耶が神妙に口を開く。 「きっと、ここからの撮影。お延の晩年期に別のキャストをあてるっていうんでしょ」 相手から聞くよりは先に言ってしまったほうが楽なものもある。 総監督は構わずに横を向いたまま煙草をぷかりぷかりとふかしている。 「私なら別に構いませんよ、どうせ、ここから先は演技力だけがモノを言うんでしょうしね。 だったら、もっと実力のある熟年の女優さんを起用したほうがいいに決まってるし」 と、そこまでを一気に言ったあとで、沙耶は悔しさに表情を歪めていた。 「ん、そうだねえ、それでもいいのかもしれないけどね」 ゆっくりとした口調を変えることなく、総監督は灰皿に煙草を押しつけた。 「俺としては、ここから先もサヤちゃんたちにご尽力を願いたいんだよねえ」 総監督は、沙耶たちの方にくるりと振り向いて言葉を続けた。 「知ってるよ、俺。サヤちゃんが忙しいスケジュール縫って乗馬の教室に通ってた事」 不意をつかれた格好で、沙耶は動揺した。 「普通ならさ、こんなもん別にスタントに任せて終わりで良かったのにね、って話なんだけ どさ、サヤちゃんは少しでもいい演技がしたいからって練習してたんだよね。シーン自体は 少なくてあんまり報われてなかったかもしれないけどさ、俺、知ってるんだ」 総監督の言葉に、沙耶は顔を紅潮させ、鼻を鳴らして小さく頷いた。 「そうね、それに沙耶ちゃんは誰よりも早く撮影に入って、他の共演者の撮りを全部見てい たわ。少しでもそれを自分の糧にしようとしてたんでしょうね」 小鶴もそれに同調する。 確かに、鷹羽沙耶の演技に対する評価は低かった。しかし、それはあくまでも彼女の演技 技量が低かったためというわけではなく、他の大物と呼ばれる共演者との所作や台詞の張り 方などでの「違い」が大きかったがために起きた溝に起因するものだったのだ。 「それに、テレビ越しに見た時にさ、サヤちゃんは他の人たちよりも、若くて瑞々しくて、 艶めかしい、いい身体をしてるもんだから、余計に目立ち過ぎたんだよね」 これは、役者起用の大失敗とも言えた。この一大シリーズはテレビ局の開局50年を記念 して、主役を若手最有力、鷹羽沙耶、そして脇を宮城小鶴をはじめとする大物で固める布陣 だったのだが、それがために、弱冠23歳の沙耶は他の熟年俳優たちに囲まれて、浮いた演 技を強いられる羽目になってしまったのだ。早逝した夫の役の松木豪一郎ですら57歳なの だから、もはや親子の差以上である。 「……ええ、ですから、これ以上この作品を貶されないためにも、私より使える女優さんを お延にしてもらいたいんです」 本当は役を続けたいはずの沙耶の要請に、総監督は首を横に振る。 「いいや、俺の中の彼女はね、戦国の世をしぶとく生き抜いた女城主お延はね、どこまで行 ってもサヤちゃんなんだ。ここで全く違う女優さんをあてても起死回生なんて、とてもとて も……」 そして、じっと沙耶の目を見つめて一言。 「俺はさ、沙耶ちゃんに女優を感じてるんだよ」 ふうっと一息。そして目に、沈んだ光をためつつ言葉を続ける。 「それでさあ、ここから先の撮影の前に……なんだけどさ、ちょっと覚悟のほどを聞いてお きたいんだよね、俺、ほれ、サヤちゃんのさ」 「はあ、覚悟ですか?」 怪訝に聞く沙耶。 「うん、そうだ。……その、小鶴さんくらいの年代の役者さんなら知ってるだろうけどね、 『老け役』を演じるってのはなかなか難しいんだよ。それこそ、老人の顔を作るために、自 分の前歯を何本も引き抜いて、とかねぇ。……その覚悟が君にはあるのかなあ?」 口調はいつも通りののらりくらりだったが、語調には詰まるものがあると見えてところど ころがしどろもどろになっている。 沙耶は、自分の口元に手を当てて、ゆっくりとその歯の感触を舌で確かめた。一度抜いて しまったら、二度とは生えてこないこの白く輝く歯。親から貰った貴重な身体の一部。それ を代償にしてでも、自分は演技に打ち込めるのか、と。 しばしの躊躇の後に、 「ええ、役作りのためになら、なんでもしますよ。若さだって捨てます」 一言だけ。覚悟と共に。 「そうか、ありがとう。……じゃあ、次は小鶴さんの番だね」 と、今度は監督は宮城小鶴を振り返って言った。 「えっ、私?」 眉間に深い溝を刻んで、老女優は馴染みの監督の顔を窺った。 「ええ、ここから先、小鶴さんにもやっていただかなくちゃならないことがいろいろあるん ですよ」 「えっ、でも、私のこの先することと言ったら次回放送の予告くらいなもので、もうそれだ って全部撮り終わっているでしょう。その他にも何か、私にしろって言うの?」 本来ならば、彼女はもうお役御免のはずである。何しろ彼女の役、お芳はもう他界してい るのだから。 「ええ、でもですね。小鶴さん、悔しくはありませんか」 視線に険を蓄えながら、監督は大物女優を下から上へと非礼な態度で眺め上げた。 「……どういうこと。タクちゃん」 さすがに温厚な態度は保っておきながらも、内心穏やかではない小鶴は、自分の子供ほど の年齢の総監督を静かにじろりと睨んだ。 「小鶴さんの演ってきた作品は、俺もほとんど見てきたつもりですが、このシリーズでのあ なたの演技は、そりゃあ、もうひどいものでした。それこそ、サヤちゃんなんかの比じゃあ なく、ね」 遠慮会釈のない総監督の言葉に、大女優はそれでも動じることはない。 「なるほど、それは言われても仕方のないことね。たしかに『女優K』はひどい働きだった と思うもの。台詞を出すタイミングは遅いし、動作はもたもたしていてメリハリがなかった し、いくらなんでもこんなお婆ちゃんが30歳からの女ざかりを演ってたら、失笑ものでし ょうね」 自らの老いを認める小鶴は、寂しそうな笑いを片頬に浮かべていた。 「だから、この老害が取り除かれた後になら、きっとこれからの撮影はうまくいくと思うの よ、だから、ね。タクちゃん、これから先のことなんて、ムリ言わないで、ね」 すると、監督はその言葉にも首を横に振っていた。 「いいえ、もう一つ、小鶴さんには隠していたことがあるでしょう」 首をかしげるように覗きこむ沙耶から視線を逸らそうとする小鶴。 「あなたはね、ずっとこの撮影中、サヤちゃんに対して嫉妬から敵愾心を抱き続けていたん ですよ。自分がもう二度と手に入れる事の出来ない、男の目を惹きつけてやまない若さを、 魅力に対してね」 「黙りなさいよ、タクちゃん!」 かあっ、と顔を赤らめる宮城小鶴は震えながら言葉を奔らせた。 「そうよ! 悪い? 私はたしかに沙耶ちゃんの若さを羨んだわ。だけど、それが何よ、そ んなの私たちの年代の人間なら当たり前に持ってていいはずの感情じゃない」 「だけど、その負の感情を抱いたままに演技をしていたら、舞台の上での意思疎通なんてで きないことくらい、余人なら知らず、宮城小鶴なら分かっているはずでしょう?」 総監督の言葉にはうっすらと怒りが込められていた。 「動きが悪いうんぬんは差し引いても、あなたは今回、主役を空転させてしまいました。そ れをただ、出番がなくなったから降板なんて、ムシが良すぎると思いませんか?」 小鶴は今度は白くなって、表情を引き攣らせていた。 「……だったら、だったら私にどうしろっていうのよ」 小鶴は今にも消えそうなほどにか細い声で、目の前の虚無的に無表情な男に尋ねた。 「ええ、サヤちゃんみたいに未熟な子でさえ『若さを捨てる』と言ってもらったんですもの あなたほどの女優だったら……そうですね、『過去の名声の全てを捨てる』くらいのことは 言ってもらわなけりゃ、示しがつかないでしょう」 小鶴は、いままで子役時代から数えて主演客演70作もの映画に、そして数えきれないほ どのテレビドラマに出演し、賞と名声と、そして地位とを得てきたのだ。しかし、そんなも のは、今の彼女の中に渦巻く情念の前には毛ほどの意味も持たなかった。 「ええ、いいわ。いいわよ、捨てるわ。地位も名声も、お望みならば命だって捨ててやる。 だから、監督さん、私にもリベンジの機会を頂戴よ!」 迸る感情を雷のように一度に奔らせると、肩で息をしながら小鶴は監督を睨みつけた。 「ええ、いい表情です。小鶴さん、そうこなくっちゃ、死中に活を見いだすなんて真似はで きるもんじゃありませんよ」 再び飄々とした口調に戻った監督は、満足げに老若二人の女優を見比べた。 「一人は芝居のためならば若さも捨てるといい、そしてもう一人は芝居のために過去も捨て てくれるという。それでこそ俺も監督冥利に尽きるってもんですよ」 そして、監督は壁に掛けられた自分のコートのポケットを探ると、中からゴムチューブの ようなものを取り出した。真ん中にはポンプのようなものが付いている。 「あら……血圧計かしら、別に私、そんなもの必要ないわよ」 「いやいや、ははは、これはそんなもんじゃありませんよ。さ、それじゃあ二人とも腕を出 してくれるかな、うん、そう、袖はまくって、そんな感じで」 まったくしていることは血圧測定のようなものだった。ただし、腕に巻きつけるカフとい うベルトが二股に延びているということ。あとは測定器が付いていないということだろう。 その部位には小さな人工肺のような嚢が付いていた。 「さあ、それじゃあ二人とも服を緩めてね、サヤちゃんはブラウス、一番上のボタンは外し て、ベルトは外してスカートのホックも外しておくこと。それから小鶴さんも、和服の場合 には前の身ごろを大きく取って、そうそう、腹帯も少し緩めておいたほうがいいですね」 てきぱきと、写真撮影の下準備のように手際良く、監督はソファに座らせた二人の衣服を 緩めておのおのの腕にカフを巻き付けた。 「ねえ、何をするつもりなんですか?」 意味不明の準備を強いられれば不安は増すばかり。沙耶は不安に顔を陰らせた。 「大丈夫、痛いことは一瞬だけだしね、ただちょっとだけ、意識が飛んじゃうかもしれない から、そこのところだけ、よろしくね」 監督は軽く言いつつポンプをぺこぺこと押したり離したりする。 「ちょっと、『飛んじゃうかも』じゃないでしょ、こら、ちょっと、いやっ、あ……あー!」 「いっ……ぎゃー!」 二人の悲鳴をそっちのけで、監督はなおもぽこぽことポンプを押したり揉んだり。 「んー、間違えたかなあ?」 すでに二人は白目を剥いて伏せ倒れている。しまったなあ、と頭をぽりぽりと思案にくれ る軽薄中年男がしばらくの間うろうろと二人の様子をうかがっている間に、彼の望んだ効果 はゆっくりと二人の女の姿に発動していったのだった。 「う……うん、いったいなんてことしてくれるのよ、タクちゃん、説明しなさい……?」 小鶴は言葉を途中で止めて自分の声の異変に気が付いた。声量が、張り上げているわけで もないのにやたらとあるのだ。それに、いつもより声質自体に伸びやかな張りがある。 あわててノドに手をやると、そこにあったはずの無数の横じわが消えてつるつるとしてい るのだった。 はっ、と目をみはって自分の両手に視線を注いだまま固まってしまう。 「……って、なんじゃ、こりゃあっ!」 白い、のはそのままだが、その節くれだっていたはずの指先がしなやかに光沢を帯びて輝 いている。渋皮の張り付いたようだった爪にまで赤みと艶とが戻っていた。 そして、何よりの違和感。胸元の下着をぎちぎちと押し上げる弾力の正体に、小鶴はさら に目をみはる。 そこにあったのは干し柿のように項垂れて、おどおどと下着に収まっておとなしくしてい た空気の抜けかけた風船ではなく、完熟の熱帯果実LLサイズの二点セットだった。完全に 下穿きのトップスを脇に押しのけて肌着の前のボタンを弾き飛ばしてしまって、神々しいま でのその乳房の双頂を半ばまでも露わにしていた。 「やあ、気が付きましたね小鶴さん、どうぞ、その鏡でよく見てください」 やたらとにこにこしている監督を尻目に、手洗いに駆け寄った小鶴は、その鏡の中に見た。 「きゃあっ、何よ、コレ、若い……若返ってるわよっ!」 皺ひとつないつるつるとした自分の顔をさすりながら、小鶴は娘時分の美貌を取り戻した その姿を、食い入るように眺めた。 艶やかな黒髪は青みを帯びて光を反射させ、理知的な瞳は視界も明るく、また長い睫毛の 中に濡れたような潤みをのぞかせる。血色のよい頬から下に弛んでいた皮膚や脂肪は解消さ れて形良い輪郭を浮き彫りにさせる。かつて、世界にも通じる美貌だと賛美されたおそらく 20歳前半、絶頂期の彼女の姿であった。 「ちょぉっと、タクちゃん、後ろ向いてて頂戴ね」 言いつつ、前をはだけてみる。と、いうよりは半ばまでが露わになった胸を完全にポロリ してしまっただけだった。それは、かつて、彼女の持っていた自信であり、そして勇気の象 徴でもあった。思わず、知れず、笑みがこぼれてしまう。そして、裾をするり、と引き上げ て下半身をも確認してみる。するとそこにはもうひとつの彼女の自慢だった美脚もまた、完 全に復活していた。白くなめらかな太ももの肉付きの良さは、野趣と色香と青春との結合し た美貌の結晶だった。 「ね、いいでしょ、それ。俺も小鶴さんのセクシーな寝姿に思わず濡れちゃいそうだったよ」 後ろを向いていても、結局はガラス戸に反射して見えるのだから仕方がないことだった。 しかし、それに対して小鶴が怒る様子はない。 「ねえ、さっきの道具よね、私がこんなに若くなっちゃってるのって、いったいそれってな んなのよ?」 せっつくように質問を浴びせる。 「……ええっと、ねえ。ま、それはつまりですねえ」 どこから説明しようかと思案する監督だったが、隣の真っ暗な仮眠室から這い出してきた 一人の女性の出現で、その手間は省けた。 「ん……ん、そこにいるの監督さんと宮城さん、ですよねえ、なんだか私、目が良く見えな くて、やけにノドが渇くんですけど……」 現れたのは、どこにでもいそうな『おばあさん』だった。顔立ちには往年の整った容貌の 名残りがはしばしに見られて、愛嬌のある可愛らしさを醸すものだったが、その着衣や髪形 だけは、若向きの最先端、といった完全にミスマッチなものだった。 「やあ、サヤちゃん。具合はどうだい?」 うー、と小さく唸り声を上げて、 「もうサイアクです、なんだか身体の節々は傷むし、足元はふらつくし、なんなんですかぁ まったく……って、声まで変だし」 喉元に手をあてた沙耶は、そこに触れた肌がゆるく弛んだものに変質していることに気が ついて、はっ、と指先を見た。 「いやっ、何よ、これ、私の手じゃないわ!」 そして、ようやくなじんできた視線を動かしていくと、そこにはなだらかに下降修整され た胸元が、締まりをなくして膨れ上がったウエストが、そしてスパッツの中にぼってりと沈 みこむように膨張したヒップが光景として広がってきた。 「な……何よこれ、鏡、鏡を見せてよ」 よろよろと洗面の鏡に寄りつくと、 「い、やああっ、私、年寄りになってるぅっ!」 あまりに大きな声で叫んだために、むせて咳き込む沙耶だった。 涼やかだった目元は瞼の弛緩により半ばほどが塞がった状態で、顔全体にはまんべんなく 深い皺が彫刻されている。中でも頬から口元にかけてのマリオネット線は、まるで切れ込み が入っているのではないかというほどに、深く刻まれて、老いの実感を如実にさせる。グラ マラスロングの頭髪は完全に白くなっていて、つややかさもボリュームも減少していた。 「いやいや、そんなに卑下したもんでもないよ、品の良さと過日の充実ぶりが窺える、老貴 婦人としてはなかなかの風情じゃないか」 「ちょ……っと監督さん、私の身体をどうしちゃったんですか、あの道具って、いったいな んなんですか」 詰め寄られた監督は、沙耶にちらりと目配せをして小鶴の方に向き直らせた。 向かい合い、そして硬直する乱れかけた和装の美女とカジュアルなフリルを多段にあしら ったワンピースの老女。 「え、まさか……宮城、小鶴さんなんですか?」 「あら……その声は沙耶ちゃん、なの?」 驚き戸惑う二人の女に、監督は一言だけ。 「うん、俺が年齢を入れ替えたんだ」 女二人してのステレオサウンドでのしばらくの喧騒がようやく収まったのちに、 「……ん、とね、女城主お延の晩年期はそれは不遇なものだったんだ」 監督は今後の撮影部分についての説明に入っていた。 「溺愛していた嫡子鹿子丸は不肖の息子でね、家臣の妻に入れ上げた末に夜這いをかけよう としてその家臣に斬り殺されてしまったんだよ。それから彼女の迷走は始まってね、家臣団 との間の溝が深まって孤立していく中で、他国へ逃げようとして捕まり、とうとう農民へと 身分をおとされてしまうんだよ」 「あら、若い頃の武勇のほどからすると、それはちょっとかわいそうな結末ね」 小鶴が合いの手を入れる。 「うん、だけどここからがもう一つの彼女の物語でね、50をとうに過ぎていたはずの彼女 は、なんと30前の男と再婚をして、そしてその家の女房としておだやかな晩年を過ごすん だそうな」 「ええっ、そんな20も齢下の男と再婚って、どうしてそんなになっちゃったんですか」 沙耶をはじめ俳優たちには今後の話の展開は伏せられていた。 「どうやらね、彼女は絶大な権力を失って、そして歳をとって容色褪せた身になって初めて 人間としての丸みが出てきたようでね、それが寡の男を惹きつけたということだそうな」 そして、ちらりと沙耶を見た。 「そこでね、サヤちゃん。君に演ってもらいたいのはそのお延の生き様なんだ。すべてを無 くしても、どんなきびしい境涯におかれても人は生きていける、とその老い果てた姿で証明 してほしいんだ……君ならできるね?」 沙耶は、しばらくの間目を伏せて自問していたが、やがて老いくぼんだ眼窩に炯々と光る 目を開いてその期待に応えた。 「はい、私は女優ですから、私の武器は若さや美しさだけじゃない。心を込めて役を演じる ことが本意なんですから……できます、やらせてください」 力強く頷いた。 「それじゃ、次は小鶴さんだね。あなたにはこれから二つのことを同時に演じてもらうよ」 「二つ……なの?」 監督の言葉に小鶴は尋ねた。 「そうさ、あなたはこれから新人女優、『山形ヒナコ』になってもらい、それからそのヒナ コにはお延の乳母お芳の孫娘で、お延をずっと陰に日向に支えていく『網代』という役を演 じてみせてほしいのだからね」 劇中劇、とはまた違う。なにしろ新人女優を演じた上に、もう一つの人格を演じろという のだから、この試みは前人未踏のものであった。 小鶴は瞳を爛、と輝かせるとすっくと立ち上がって言った。 「いいわ、やってみせる。せっかくサヤちゃんからこんなに若々しい23歳の娘盛りを貰い うけたんですもの、ほら、見てよこの胸の弾力、お尻の盛り上がり方。二度とこんなプロポ ーションには戻れないと思ってたわ」 うっすらと陶酔した表情で、和服の上からでも確認できる素晴らしい肉体の凹凸を誇示し ていた。その様子に沙耶は非常にまずい表情をした。 「ええっ、ちょ……監督さん、これって撮影が終わったら元に戻してくれるんですよね」 「あら、タクちゃん、私このままがいいな。ねっ、いいでしょ」 甘えた表情でシナをつくる小鶴。 「いやっ、何気持ち悪いこと言ってるんですか、戻してもらわなくちゃいけないに決まって るでしょ、私だっていつまでもこんな身体でいたくはないですもの」 しばしの間、女二人のやりとりを黙って観察していた監督だったが、 「よし、それじゃこうしようか、今後の撮影でいい演技ができたほうを今後、23歳にする として、ダメだった方が69歳になるってのは……どないでしょ?」 軽いものの言い方だったが、彼はマジだった。途端に瞳を輝かせる小鶴、もといヒナコ。 そして、驚愕にぷるぷると震えながら血管を額に浮かせる沙耶婆さん。 「いいわ、その勝負受けたわ」 「いやっ、そんなの駄目です! どんな結果になろうとも私は元に戻してもらいますから、 小鶴さん、絶対そんなの駄目ですからね」 「あーん、そんなこと言われたって、ヒナコそんなお婆ちゃんになんてなりたくないもん」 すでに勝負は始まっていた。小鶴はすでに、「現代の若者」の演技をはじめていたのだ。 「絶対に……絶対に、ダメなんですからねーっ!」 その二人の様子をほほえましく眺めながら、監督は今後の撮影の見通しが明るいものにな るであろうことを無責任かつ本能的に予感していた。 大型時代劇、「女城主」の前半部の評価は、やはり最低なものだったという言葉を私は翻 すつもりはない。視聴率にもあらわれている通りに、役者間のちぐはぐな演技は話の本筋を 食ってしまってどうにも受け付けられないしこりを残すものであったことは、前言をそのま まにしておこうと思うのだ。 しかし、後半部。今まであまりにも瑞々しかった鷹羽沙耶が特殊メイクにより、完全に違 和感ない老年女性に変身してからは、今までのとり澄ましたものでない迫真の演技が光って いた。鷹羽沙耶は、姥皮を被って本来の彼女の持つ情熱を示し得たとも言える。 また、途中降板した宮城小鶴に替わって起用された無名の新人、山形ヒナコの異彩につい ても付言せねばなるまい。彼女は宮城が演じたお芳の孫娘という役柄だったが、若い頃の宮 城の美貌を彷彿とさせる容姿で、実に感性豊かな表現能力を劇中で発揮し、鷹羽とその演技 を競っていたように思われる。まだまだ新人で荒削りな面も目立つが、成長とともに大女優 への道も拓けるのではないだろうか。 後半7話の平均視聴率は30%オーバー。特に最終話での視聴率は実に41.5%という 近年でも稀な興業に終わったのは、特に鷹羽、宮城の二人の鬼気迫るせめぎ合いの緊張の中 に生まれた成果であったのかもしれない。 ともあれ、次回の北崎拓也監督作品では、この期待の新人山形ヒナコが主演をするという ことなので、今からその動向が気になるところである。また、今回の老け役の面白みに目覚 めたのか、鷹羽沙耶は、私生活でさえも特殊メイクを落とさずに、老婆の姿で生活をしてい るということで、こちらのセンでもいくつかの企画が持ち上がっているということだ。 本当に、これからの二人の女優の活躍からは目が離せないところである。 (ある週刊誌にて辛口コメンテーターの寸評より) 「ねえ……それで、監督さん。いつになったらその交換道具の修理、終わるのよ?」 貫禄ある睨みを利かせながら、いまだに老女のままの姿の沙耶はしわんだ口を尖らせた。 「いやいや、あはは、大丈夫大丈夫、そのうち必ず直るから、ね」 冷や汗まじりに受け流そうとする監督も、そろそろどうにかしないと収まらないな、と思 案しているところだった。 「まあ、いいじゃないですか、沙耶さんだってその格好がだいぶサマになってきたみたいで すし、お仕事も引く手あまたでしょうし……それに私も別にこのままでも困らないですもん ねー♪」 ガーリーなセンスの上下に身を包んだ小鶴は、今ではすっかり新人の山形ヒナコになりき っていた。最近では大胆にもグラビア撮影などの新境地にも挑戦するなどと心身ともに充実 した毎日なのであった。 「何を言うの、ヒナコちゃん……じゃなかった小鶴さん、あなたもあなたよ、自分だけさっ さとその姿でのドラマ出演とかお仕事とか決めちゃって、元に戻ってそこに穴を開けたりし たら、周りの人たちにどれだけ迷惑かけると思ってるの!」 唾が飛ぶほどの勢いで、沙耶は小鶴を叱った。 「はいはい……ったく、沙耶さんったらアタマ固いんだから、それにだんだん説教臭くなっ てきてないですか?」 からかうように微笑む小鶴にはもはや往年の威厳は微塵も残っていなかった。 「……っ、こんのぉ小娘があ!」 かしましく口げんかをはじめた二人の女の姿をぼんやりと眺めながら名匠北崎監督は、次 はどこのどいつを入れ替えたら面白いだろうなあ、などと思案にふけるのだった。 おしまい
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/144.html
462 入れ替わりの鉄棒 [sage] 2010/08/19(木) 21 16 28 ID tViTa4yh Be 閑静な住宅地の隅にある公園。 夕焼け空の下で、鉄棒の傍に二人の少女が睨み合っていた。 地元の公立中学のセーラー服に身を包んだ少女たちは、これ以上一歩も引くまいといった雰囲気で鉄棒を握っている。 「…そう、野山さんは、別れるつもりはないっていうのね?」 ストレートロングなヘアを無駄に輝かせているお嬢様風ながら、気の強そうな女の子が、ツーテイル(ツインテール)のかわいいながらもごくごく普通の女の子に向かっていう。 「当たり前よ。 だって、あたし、佑くん好きだもん。あたしが佑くんと付き合ってるんだもん」 「ふん、野山さんもいうようになったものね。 わたしと比べたら、佑のこと三年ぽっちしか知らないくせに!」 「…だって、しょうがないじゃない! あたしが、佑くんと出会ったのって小五のときだったんだから」 「そんなのってないわ。ずるい、ずる過ぎるわよ。わたしなんか幼稚園のころから佑のこと知ってるのよ。なんだって、あなたみたいな泥棒猫に佑を取られなきゃいけないのよ!」 「耀子ちゃんこそ、いつも幼なじみぶって、お金ばっかりかけて佑くんを誘っていたじゃない? あたしがどんな気持ちだったか分かっていてやっていたでしょう?」 二人の女の子をお互いに相手の顔を自分の瞳に映しながら、鉄棒を握りしめる。 「そういうあなたこそ、佑といきなり付き合い出したりして、どういうつもりなのよ? ああもう、佑も佑よ。わたし、全然理解できない!」 「それは耀子ちゃんが佑くんの気持ちをちゃんと考えてないからよ。いつも自分の気持ちばかり押し付けて、それで相手がいつも喜んでいるとでも思っているの?」 「な、何ですって!?」 「耀子ちゃん、いつも自分のことしか見えてないし、自分のことしか考えてないじゃない! 祐くんのことだって、佑くんなら自分と釣り合いそうな容姿とか成績だからちょうどいい男ってくらいにしか思ってないんじゃないの?」 「そういう野山さん、あなたこそわたしの気持ちを考えたことあるのかしら? いつもいつもわたしの邪魔ばかりして、この上、佑まで奪うだなんて、わたしのプライドがどれだけ傷つけられたか分かる? 一度、わたしの気持ちをあなたにも味わわせてあげたいものだわ」 「お、お互いさまよ!」 「こんな普通の女の、どこがいいのかしら? こんな女にわたしが負けるなんて、許せないわ」 「何よ!」 二人は両側から全体重をかけるように、上から同じ鉄棒を押さえつける。 そのとき、鈍い色をした鉄棒がキンという音とともに火花を散らした。 鉄棒が真ん中で折れ、その途端、摩擦か何かで電流でも生じたのだろうか、二人はビリっしたものが全身を駆け抜け、その途端痺れる手足の先から感覚がなくなっていくのを感じた。 「キャッ!」 「いやっ!」 ぼやけていく視界の中で、憎き恋敵の顔が歪んでいくのが最後に見え、二人は意識を失った。 「痛っ……頭が……か、体が痺れて……どうなって……」 『どうなってるの』と言いかけて、こげ茶な長髪の女の子…榊原耀子は、地面に手をついて上半身をお腰かけた姿勢のまま凍り付いた。 「な、何、この声……」 どう聞いても、自分の声ではない女の子の声が自分の喉から発せられている。 そして、さらりと背中に垂れている長い髪の毛が首筋を撫でる感覚にぞわっとした。 自分はツーテールで、首筋には髪の毛が当たっていないはず。 それどころか、左右に結っている髪の毛の引っ張られる感覚がまるでない。 「……この声、なんか耀子ちゃんの声……のような」 頭が引いていく音を聞きながら、耀子は上半身を起こし、自分とは鉄棒を挟んで反対側にいる女の子の姿を認めて、顔を凍らせた。 「あ、あたしがいる…」 「わ、わたし……なの」 先に目覚めていたらしい自分…野山梓は、呆然としながら顔を引きつらせていた。 「ウソ、一体何がどうなっちゃってるの?」 「見ての通りよ、わたしと野山さん、体…というよりは、心が入れ替わっちゃってるみたいね。まあ、記憶だけが入れ替わっちゃっているのかもしれないけど」 野山梓になった(耀子)は先に目覚めていたためか、まだ冷静な口調で、突き放すようにいう。 「そ、そんな、あたし、耀子ちゃんになっちゃってるの!?」 「そういうことね。ふふ、でも、いい機会かもしれないわね。どうしてあなたみたいな女が佑の隣にいるのか、見極めさせてもらうのに絶好の機会だわ」 あまりにも理解不能なことを言い出す(耀子)に、耀子(梓)は頭がフリーズしそうだった。 「……よ、耀子ちゃん、何言ってるの?」 「今言ったとおりよ、わたしは暫く野山さんになりきってるみるわ。そして、あなたも榊原耀子して暫くわたしの振りをなさい」 「な、何でそんなことしなくちゃいけないのよ!?」 「あら、そんなこと言っていいの? こんなこと、他人に言って信じてもらえるとでも思う」 「そ、それは……思わないけど」 「下手したら精神病院送りになるわよ」 「う、ううっ……でも、耀子ちゃんは今すぐにでも元に戻りたいと思わないの?」 「最初は思ったわよ。当然ね。あなたみたいな普通の女になりたいわけないじゃない。でもね、倒れてるあなたをずっと見てて思ったのよ。これはわたしの敗因を探るチャンスかもしれないって、そう思ったのよ」 「な、何よ、それ?」 「今はわたしは野山梓、佑の彼女なわけでしょう? あなたがなぜ好かれたかを探るのも、あなたの評価を下げるのも、わたし次第で何だってできるのよ」 「ひ、酷い!」 「いいじゃない? あなた、今榊原グループの社長の娘なのよ。もっと胸張りなさいよ。榊原耀子のすべてが今はあなたのものなのよ」 「そ、そんなのどうでもいい。 あたしを返して!」 「わたしに言われても無理よ。わたしがこの状況を作り出したわけじゃないし、何より入れ替わりの原因になったと思われるあの鉄棒だって折れちゃってこの様なのよ」 「そ、そんな……」 「まあ、暫くはこの状況を楽しみましょう。わたしも野山さんがどんな生活しているのか興味くらいはあるのよ」 「いやよ、あたし、そんなのいやっ!」 余裕の様子で今にも梓の家に帰ろうとしそうな(耀子)を引き止めようと、耀子(梓)が彼女の手を掴む。 その途端、また異変が起きた。 まるで、正坐していて痺れた足を崩して、血がどーっと流れ出したときのように、触れ合っている手を通して、何かが(梓)の、(耀子)の中に流れ込んでくる。 手がパソコンの転送ケーブルになっているかのように頭と直結して、頭に何か焼き付けていく。 「いやっ!」 「キャッ!?」 悲鳴がさっきとは逆になった。 「い、今の……何だったのかしら………き、気持ち悪い」 「はあ、はあ、あたし……あたしの中に……な、何か」 耀子(梓)はつぶやきながら、梓の声を聞いて、ゾワッとした。 「ちょ、ちょっと、野山さん。あなた、どういうつもりなの? わたしの振りなんかして」 「……」 「え、わたし、自分のこと、野山さん……だなんて、どうしちゃったのかしら?」 声だけじゃなく、口調まで耀子になってしまったような自分に、耀子(梓)は顔を青ざめさせる。 「ふーん、面白いじゃない。どういうことになっちゃってるかよく分からないけど、あたしたち手を繋ぐと、人格…もしくは性格まで入れ替わっちゃうんだ」 「そ、そんな!?」 「なんだか出来過ぎてると思わない。今、あたしたち、手を繋いだら、今の自分らしく振る舞えられるようになるのよ」 「まさか……そんなこと」 「試してみる? もっと、榊原耀子に染まってみようよ」 「だ、ダメ、これ以上、わたし、よ、耀子に……耀子ちゃんに染まりたくない。もしそうだとしたら……わたし、ほんとに耀子ちゃんみたいな女の子になっちゃうんでしょう?」 「いいじゃない? 気持ちいいかもしれないわよ」 「いや…よ。わたし、あたし、あたしは野山梓だもの。梓だもん!」 「大丈夫よ。あなたならうまくやれるわ。榊原梓としてね」 「あ、ダメっ……ん、きゅっぅ!」 油断したほんの一瞬、(梓)は元の自分の姿をした(耀子)に手を捕まれていた。 榊原曜子になった(梓)は、野山梓になった(曜子)に背中を押されて、無理 やり榊原家へと帰らされていた。 『じゃあ、今夜はあたしをよろしくね』と意味深なことを言い捨てて、梓 (曜子)は野山家へと帰っていく。 なぜ(曜子)が梓の家を知っているかというと、梓との約束を優先するとい って(曜子)との約束を受け付けなかった佑に強引に付いてきたことがあった からだ。 あのときは、玄関先で帰ってもらったが、まさか梓に成り代わって自分の 家に入られることになるなんて(梓)には信じられないような事態だった。 「わたしが………よ、曜子……曜子ちゃんの家で一晩過ごさなくちゃいけな いなんて」 曜子は、じっと自分の手を見詰めながら、溜め息を吐く。 見慣れない、指が長くてすらっとした綺麗な手。 美人だとは(梓)も思っていたが、手までこんなに綺麗だとは思いもしなか った。 悔しいものの『いいなあ』と思っていた相手の容姿をそっくりそのまま手 に入れてしまったなんて今でも現実とは思えない。 「でも……」 自分の喉元から漏れる、この声、この口調。 外見だけでなく、自分の中身も既に変わってしまっているらしいことは、 (梓)にも分かる。 ほんの十数分前、無理やり梓(曜子)に手を合わされ、お互い手を握りあっ てしまっている間に、(梓)の中から自分らしさが抜き取られていくような感 覚があったのだ。 そして、自分の中に入ってくる、熱くて気持ちのよい(曜子)のものと思わ れる感情の噴流。 自分が別人に染まっていくというのは、とてつもない快感でもあった。 「ううん、ダメよ。わたしったら、どうしちゃったのかしら?」 一瞬、自分が(梓)でなくなっていくあの感覚を思い出して、恍惚としかけ てしまった(梓)だったが、なんとか自分で正常と思われる気持ちを取り戻し て、気合を入れ直した。 誰が何といおうと、(梓)は野山梓に戻らなければいけないのだ。 そうでなければ、今まで築いてきた梓と佑の関係も、自分のしてきたこと も何もかもが無意味になってしまうのだから。 『明日には、何としてでも元に戻らないと』 曜子(梓)はそう自分に言い聞かせて、高級住宅街の一角にある、この榊原 家の中へと踏み込んでいった。 ============================ 「ここが……わたしの……曜子の部屋?」 曜子(梓)は相変わらず自分の口調に違和感を感じながらも、広い曜子の部 屋に足を踏み入れていた。 やけにピンク色がまぶしいながらも、家具もカーテンもちゃんとコーディ ネイトされているらしいお金持ちの女の子の部屋に曜子は重い溜め息を吐く。 容姿だけでなく、曜子の持つ財産は野山梓とは比べ物にならないのだ。 「……この部屋に入るのって………わたし、初めて……だったわよね?」 曜子は落ち着かなさそうに、長い髪の毛をかきあげながら、部屋の真ん中 まで進んで、周囲を見回す。 確かに(梓)として曜子の部屋に入ったことは一度もない。 そして、今も『初めて』この部屋を見ているんだと認識している。 「そう……わたし、記憶までわたしと入れ替わってるわけじゃないのね……」 そうして、曜子(梓)は、記憶まで(曜子)のものに染められたわけではない のを確信して、内心ホッとした。 何しろ、もし生まれてから最近までの記憶まで(曜子)のものになってしま ったら、自分はどうなってしまうのだろうという不安がずっと(梓)に付きま とっていたからだ。 性格や癖、(曜子)らしさは、今の自分に浸透してきていても、まだ記憶が (梓)のままならば、ひとまず自分は大丈夫だろうと(梓)は思った。 「そうはいっても、問題だわ……」 記憶は問題なくても、今の(梓)は身体まで榊原曜子になっているのだ。 この身体のままでいるということは、曜子として着替えやお風呂もしなけ ればならない。 いくら羨望する気持ちはあったとはいえ、ライバルである曜子の身体のす べてを知るというのは、(梓)としては嫌なものだった。 今もこうして立っているだけでも、自分の胸や脚の感覚に違いを感じるし、 そのスタイルよさを自覚してしまうくらいなのだ。 「わたしが榊原曜子なんて……」 曜子(梓)は、クローゼットの傍にある鏡台を見つけ、ついそちらの方へと 向かってしまう。 分かってはいても、(梓)はまだじっくりと榊原曜子の身体を見てはいなか ったのだ。 そして、曜子(梓)は、鏡台の鏡を開いて見てしまった。 鏡に映る……ティーンモデルのような長髪で美人な女の子を。 「はあ……」 そのとき、全身を駆け抜けていった感覚が何なのか、(梓)にはすぐには理 解できなかった。 ビリッと脳髄を刺激する甘美な快感。 自分のうっとりするようなマスクやスタイルを眺めていると、すべてがど うでもよくなるような感覚。 (梓)は、もう榊原曜子としての自分の容姿に夢中になっていた。 そう……(曜子)は、根っからのナルシストだったのだ。 そして、今(梓)は、榊原曜子として、そんな自分に陶酔していた。 「はあ、素敵……」 自分の口から信じがたい言葉が漏れているのに関わらず、(梓)はそれを止 めるどころか、自分自身を抱きしめてしまっていた。 心の隅では、異常を感じ取っていてもどうしようもなかった。 (梓)は、既にナルシストな(曜子)と同じになってしまっていたのだから。
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/112.html
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話 第13話 第14話 第15話 第16話 第17話 第18話 第19話 第20話 第21話 第22話 第23話 第24話 第25話 第26話 第27話
https://w.atwiki.jp/odchange/pages/21.html
投稿日:2009/01/15(木) 9月が終わり、季節はそろそろ秋になる頃。 私が部活を終え帰宅すると、珍しい客が来ていた。 「こんにちは、さくらちゃん」 「――あ、麗子さん。こんにちは。お久しぶりです」 思わず叔母さんと言いそうになり、少々慌ててしまった。 麗子さんは父の妹で、私はもう何年も会っていなかったが、 すごく綺麗な人だったのだけは覚えている。 スタイルは抜群で身長も170以上と、ちんちくりんの私とは大違いだ。 今日も派手な化粧をして、長い脚や大きな胸を強調する格好をしていた。 もう40にはるはずだが、どう見ても30くらいにしか思えない。 ただ性格が強気で、恋愛は多くても結婚はできなかったらしい。 お父さんやお爺ちゃんは、そんな麗子さんを心配してたみたい。 「さくらちゃんも大きくなったわね。今高一?」 「はい!」 「よく焼けてるわね。クラブ活動もいいけれど、 日焼けにだけは注意しなさいね。女の子なんだから」 「はい……」 私は陸上部で主に長距離走をしており、小さいけどスタミナには多少自信がある。 でも、この夏は大分焼けてしまって後が大変だった。 色白の麗子さんにそう言われるのも納得できる。 「それでね、兄さん――」 「なんだい?」 麗子さんはお父さんに向き直ると話を再開した。 「実は、あたし結婚するの」 「――え? 結婚するのか?」 「でね、今日はその報告に来たの」 「……そ、そうか。おめでとう」 唐突な話にお父さんは驚いているみたい。 「そうか……お前も結婚か。親父も喜ぶだろうなあ。相手はどんな人なんだ?」 「一流大卒の公務員よ。真面目で優しい人なの」 「へえ、そうか――」 部屋はお祝いムードに包まれている。 そうか、麗子さん、結婚するんだ。 私がおめでとうと言うと、とても喜んでくれた。 「ありがとう、さくらちゃん。結婚式には来てちょうだいね」 「はい、行きます!」 麗子さんはその日、うちに泊まる事になった。 自慢じゃないけどうちは結構広く、客の2、3人は泊まれるようになっている。 代わりに交通の便が異様に悪く、私もお父さんも電車に長時間乗らないといけない。 地方のニュータウンなんてそんなもんよね。 麗子さんは私にとっても優しくしてくれて、お小遣いももらってしまった。 私も麗子さんみたいに綺麗になりたいなあ、と思いながら眠りについた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「――ふああ……」 目を覚ますと、既に麗子さんは帰ってしまっていた後だった。 私も早起きなのだが、麗子さんはもっと早く、朝一番の電車に乗っていったらしい。 そんなに急がなくてもいいと思うんだけど。今日は土曜だし。 とりあえず着替えを済ませた私は、朝食の前に 日課となっている走りこみをしようと家を出た。 まずは軽く柔軟運動を―― 「……あれ?」 と、そこで私は違和感を感じた。 うまく言えないけど、どこかいつもと視界が違うような…… ちょっとだけ背が高くなっている気がする。 言いたくないけど私はチビだ。150cmちょっとしかない。 それが、今日はなぜか10cm以上伸びてるように感じられた。 もちろんいきなり身長が伸びる訳がないので、その時は (――ついに私にも成長期が来たか !?) などと冗談混じりに思っただけだった。 「……はっ……はっ……はっ……」 ――おかしい。 足が痛くなり、私はその場にしゃがみこんでしまった。 まだ走り出して数分も経ってないんだけど……。 それに靴もおかしい。小さいのか、痛くてもう履いてられない。 いつもの靴だし、履き間違えたはずはないんだけど。 ――どうしたんだろう。今までこんな事なかったのに。 「……あれ?」 その時、初めてそれに気がついた。脚の日焼けがなくなってる。 あれほど黒かったのに、全く焼けてないみたいに真っ白になってて、 むっちりしてる癖にすらりと長くて――何だか大人の脚みたい。 「どうなってるんだろ……」 私は何だか不安になって、よたよた歩きながら家に帰った。 「あれ? あんた、背伸びた?」 お母さんもそんな事を言ってくる。 朝食もあまり口に入らず、私は部屋に閉じこもってしまった。 「これ――どうなってるの……?」 見れば見るほど、私の脚は違和感があった。 白くて長くて――そして綺麗で。靴も靴下も小さくて合わない。 服を脱いで下着だけになり、姿見の前に立ってみた。 顔は15年間見慣れた私の顔。よく日に焼けて焦げ茶色だ。 胸は相変わらずの洗濯板。ランニングの形が肌にくっきりついている。 そして腰から下が……私じゃないみたいだった。 どこを見ても柔らかくて肉づきが良くて、日焼けなんてどこにもない。 それにこの脚。チビの私ではありえないほど長い。これじゃ背も高くなるわ。 爪も形よく切り揃えられてて、つやつやと光っている。 いつかこんな綺麗な脚になりたいと思ったっけ。 でも、いきなりこんな風になっちゃうなんて――。 「私……どうしちゃったんだろ……」 不安で胸が押し潰されそうになりながら服を着なおすと、 部屋の外から母の呼ぶ声がした。私に電話だって。 「はい――?」 「さくらちゃん、おはよう。……昨日はありがとう」 麗子さんだった。もう家に着いて、ゆっくりしているらしい。 「それでね、さくらちゃん。今日うちに来てみない?」 「はい?」 「電車で一本じゃない。近いし遊びに来なさいよ」 唐突な話に返事もできなかったが、麗子さんは半ば強引に話を進めてくる。 この大変な時に出かけるのは気が進まなかったが、結局行く事になってしまった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「いらっしゃい、さくらちゃん」 「こんにちは、麗子さん――え?」 マンションで出迎えてくれた麗子さんを見て、私は驚きの声をあげた。 「麗子さん――縮んで……?」 そう。私より20cmも高かった麗子さんの背が、私と同じくらいになっていたのだ。 しかし麗子さんは私をリビングに案内しながら、 「いつも身長を誤魔化してたから。ホントはこんなもんよ」 と笑った。……ホントなんだろうか? でも、相変わらずバストはボリューム満点だし、顔も綺麗にしている。 「――やあ、君がさくらちゃんか。話は聞いてるよ」 部屋に案内され、そう言ってきた男の人に、私は挨拶をした。 優しそうでかなりの美男子だけど、どこか頼りなさそうな人だ。 この人が麗子さんのお婿さんになる誠さんだって。何だか尻にひかれそうな人……。 「二人とも、ご結婚おめでとうございます」 出してもらったコーヒーを飲みながら、私は二人をお祝いした。 「うふ、ありがと」 「どうもありがとう」 少し話した後、私は麗子さんに尋ねた。 「――それで、えーと、どうして私を呼んだんですか?」 気になっていた質問だ。昨日の今日なのに、どうして呼びつけたのか。 「えーと、ちょっとお話しようと思ったんだけど――」 そう答える麗子さんの体が突然傾いた。誠さんもだ。 「もう効いてきたみたいだ」 「そうね……おやすみ、さくらちゃん♪」 ――違う。傾いてるのは私だ。そう気づいた時、私は意識を失った。 「う――え……何コレ…… !?」 目が覚めて最初に感じたのは、椅子に縛られた体の痛みだった。 「何で――私――」 がっちりと椅子に縛られ、暴れても体がガタガタ揺れるだけ。 バランスを崩して倒れたら大変だと思い、私は暴れるのをやめた。 「お目覚めかしら?」 私の前には麗子さんが――下着姿の麗子さんが立っている。 いつもの魅力的なプロポーションが眩しいくらいに輝いている。 この人、ホントに40かしら。 「麗子さん、コレほどいてください !!」 訳もわからずお願いする私に笑顔を向ける麗子さん。 「ゴメンね。見せたいものがあったから、ちょっとの間我慢してて。 それと、もう脚は元に戻ってるから安心していいわよ」 驚いて自分の脚を見る。麗子さんの言う通り、日焼けしたいつもの私の脚だった。 でも何で麗子さんが私の脚の事知ってるんだろ……。 「――さ、始めるわよ」 麗子さんがベッドの上でそう言うと、誠さんも同じくベッドの上へ。 お姫様を扱う従者のように丁寧な手つきで、彼女の下着を脱がせ出した。 「え――ええ……あ、あの……」 まだ彼氏がいない私にだって、今から何が始まるかわかる。 顔を低くし、麗子さんの股の間に入れる誠さん。 何かをなめる音と吸い取る音が、こちらまでよく聞こえてくる。 私は顔を真っ赤にし必死で目をそらしていた。 でも、二人はわざわざ私に聞かせるように音や声を出し続ける。 「あ……はあ……ん……ふっ……」 このままじゃ私まで変な気分になっちゃう……。 そう思った時、ようやく二人はやめてくれた。 「そろそろかしらね」 紅色に頬を染めた麗子さんがこちらにやってくる。 誠さんはと言えば、何もせずベッドからこちらを見ているだけ。 「仲がいいのはわかりましたから、コレほどいてください!」 しかし麗子さんはもがく私の頬に手をやると、 「可愛い子……」 「な、何なんですか! 早くほどいてくださいよ!」 「待ってね。今取ってあげるから……」 そのまま両手で頬を挟み、まるで首を引き抜くように―― そして、信じられない事が起きた。 私の首が引っ張られ、すぽんと抜けてしまったのだ。 「――え?」 「うふふ……」 手に私の首を持ち、妖艶な笑みを浮かべる麗子さん。こ、怖い。 何で私の頭が取れちゃったのかわからないけど、マジで怖い。 私の頭は机の上に置かれ、そこから首のとれた自分の体が見えた。 見慣れた自分のはずなんだけど、首がないと違って見える。 黒くて小さくて、細くてガリガリの女の子。だけどいつもの私の体。 「それじゃ、ちゃんとほどいてあげるわ」 玲子さんはそう言って私の体を解放した。 でも、首のない私の体はぴくりとも動かない。 「…………」 私は恐怖のあまり、口一つきけずに怯えていた。 「じゃあ今度はこうして……」 麗子さんが頭を抱えるように両手をやると、今度は麗子さんの頭が抜けた。 なぜかはわからないが、首がとれた体は私のとは違い動けるようで、 そのまま頭を持って私の体の側に行くと――私の体にそれを乗せた。 「…………!」 「――ふう」 ゆっくり立ち上がり、私の馴染ませるように動き始める麗子さん。 「やっぱり背が低いわねえ。でも軽くて動きやすい感じ」 私の体をそう言って誉めてくれたけど、全然嬉しくない。 「ほら、どう? さくらちゃん。あたし高校生に見える?」 ……全然見えません。 顔は色白の麗子さんで首から下が私の黒い体だから、すごく違和感がある。 そして次に、首のなくなった自分の体をロープで縛ってしまうと、 「――誠、お願いね」 呼ばれた誠さんは縛られた麗子さんの体を大事そうにそっとベッドに運んだ。 その間に麗子さんは何かのクリームだろうか――を取ってきて、 首のない体のあちこちに塗りたくる。……アソコや乳首にまで、たっぷりと。 「もうよさそうね。――さくらちゃん、あたしの体を使わせてあげるわ」 (――え !?) こちらが反応する前に麗子さんは私の首をとると、 横たわった自分の体にさっきと同じようにくっつけてしまった。 「――あぁああっ !?」 首がつけられた途端、あまりの衝撃で頭が焼けそうになった。 「胸……かゆい……あそこ……も……ムズムズするぅ……」 「その媚薬、なかなか効くでしょ? 高かったのよ」 「いやぁああっ !!」 そんな麗子さんの言葉も耳に入らず、私は泣きながら嗚咽と痙攣を繰り返した。 「ほら、随分と巨乳になったじゃない」 「――あぁあっ !?」 黒くて小さな手が私の胸を鷲みにし、乳首をギュッとつねり上げた。 「下の方も大洪水よ。さくらちゃんはホントにエッチな子ね」 ――違う。違う。違う。 そう言いたかったのに、体が熱くて言う事を聞かない。 「いけない子にはちゃんとお仕置きしないとね。――誠、やりなさい」 「……ごめんねさくらちゃん。気持ちよくしてあげるから――」 私はうつぶせにされ、大きなお尻を突き出すような形に固定された。 そして、何か太いのが私の中に突っ込まれた。 「あぁあああっ !?」 初めて体験するそれは、あまりにも刺激が強すぎた。 ――ズブッ……ブチュッ……ズッ……。 「――あっ……あんっ……ひゃっ……ああっ……」 誠さんが前後に動くたび、私は耐え切れずに大声をあげた。 それも悲鳴じゃなく……嬌声。 アソコの肉が硬い棒と激しくこすれ合って汁を溢れさせる。 だらしなく開いた口からよだれが垂れ、シーツに染みを作った。 ――ダメだ。こんなの嫌なのに……気持ち良すぎる……。 「いい顔よお。その声もたまらないわぁ……」 これが――セックス……。 ニヤニヤ笑う麗子さん。いつの間にか私の体でオナニーに励んでいた。 当たり前だけど、この体に比べると全然気持ちよくないようで、 小さい胸やアソコを懸命にいじくり回す姿が妙に可愛らしい。 (――誠さん、私の次は麗子さんとするのかな……) 私は完全に判断能力を失っていて、特にそれを嫌とも思わなかった。 ただ麗子さんの体の気持ちよさに喘ぐだけ。 「あんっ……はあっ……うっ……ああっ……」 何度も中に出されながら、私は失神するまで犯され続けた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「あたしはね、人のパーツを取ったりつけたりできるの」 意識を取り戻した私に、体は入れ替わったままで麗子さんはそう説明した。 よくわからないけど、ある日そんな事ができるようになったらしい。 最初は驚いて怯えたりもしたけど、今じゃ慣れちゃったとか。 「でね、さくらちゃんにお願いしたい事があって――」 「……何ですか?」 疲れた顔で私が聞き返す。信じられないけど、 私も体験した以上は信じない訳にいかない。 「さくらちゃんの体をしばらくの間、貸してくれない?」 「はい?」 「ほら、あたしも40過ぎちゃったじゃない。一応結婚はするんだけどね。 赤ちゃんが欲しいのよ。だけどこの歳でつくるのはきつくて…… 姪のさくらちゃんの体を借りて、子供つくろうかなって。 昨日こっそり下半身だけ借りてみたけど、なかなかいい感じだったし――」 ……待て待て待て待て。 つまり、私の体で誠さんと赤ちゃんつくるつもりなの !? 「あ、もちろん代わりにあたしの体を好きにしてくれていいわよ。 それも嫌ならその辺の女の子の体をさくらちゃんにあげるし。 だぁいじょうぶ、ほんの一年くらいの我慢だから」 「嫌です !!」 「――拒否権があると思ってるの?」 「………… !!」 麗子さんの冷酷なセリフに私は言葉を失った。 既に私の体は麗子さんに取られていて、元に戻せるのは彼女だけだ。 このままこの体で帰れって言われても逆らえない。 「ま、いきなりあたしの体になっても困るでしょうから、全部とは言わないわ。 腰とお尻だけでいいわよ。手足はいらない」 「…………」 結局、私は腰の部分を麗子さんに取られてしまった。 腕と脚は元通りだし、普段はそう気にならないんだけど、 やっぱりお風呂のときはお尻が目立つ。腰回りも大きくなっちゃったから 服や下着も替えないといけないし、もう踏んだり蹴ったり。 麗子さんはあの後少しして無事に妊娠したそうだ。……私の子宮で。 聞いたときは思わず涙が出たけど、もうどうしようもない。 約束通り、来年になって赤ちゃんを産んでから返してもらうのを待つしかなかった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「……はぁ……あ……ああっ……」 今夜も私の部屋からはいやらしい音と声が漏れる。 最近は毎晩のように、こうして一人オナニーにふけっている。 (――ここ、何人くわえこんだんだろ……) 毛深く黒々としたアソコを愛しげに撫でる。そこはとっくに大洪水だ。 オチンチンかバイブか、とにかく太いのをねじ込まないと収まりそうにないと思い、 私はイボイボのついた愛用のバイブを取ると、ヒクつくアソコに突っ込んでかき回した。 「あぁっ !!」 処女だったはずの私が、今や何人もの男の子と関係を持つ立派な女になっていた。 「お前の中サイコーだよ。何てーの、名器ってヤツ?」 そう言われもしたが、嬉しい訳がない。 陸上部はやめてしまった。腰が返ってきたとしても復帰できそうにない。 麗子さんのせいだ。全部麗子さんのせいなんだ。 「――はぁ、あ……あぁあっ……」 また達してしまい、力なくベッドに倒れこむ。 (私、もう戻れないのかな……) 最大の問題は、私の心が半分くらい、現状に満足している事だろう。 ――麗子さん、早く赤ちゃん産んで下さい……。